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講演で知ったノーベル賞学者の横顔(2017年05月19日)

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講演で知ったノーベル賞学者の横顔(2017年05月19日)

講演で知ったノーベル賞学者の横顔(2017年05月19日)

本日、大阪府高等学校生物教育研究会の総会と記念講演会が府立高津高校(天王寺区)で開催され、出席してきました。ここでは「クローン動物がもたらした可能性」と題し、近畿大学生物理工学部(分子発生工学研究室)宮本圭先生のご講演の内容を紹介します。

宮本先生は、京都大学で学位を得て、英ケンブリッジ大学のガードン研究所でポスドク(博士研究員)をされ帰国後、2015年4月から近畿大学・和歌山キャンパスでクローン動物を研究中の新進気鋭の若手研究者です。今回、ご自身の研究の他、ジョン・ガードン博士の研究室でボスの間近にいた者でないと知り得ないような貴重なエピソードをご紹介戴きました(英ケンブリッジ大学がインタビュー動画を公表している)。

驚くべきことは、ガードン博士が高校時代(イートン校という名門校だったが)の生物学の成績が最下位で、教師から「生物学に進むなんて馬鹿げている(ridiculous)。」と酷評されていた逸話です。実は、話し言葉を文字に書き取るのが苦手だったと伝わります。そのハンディキャップが、ガードンの未知の世界と向き合う探究心(天賦の才)を開花させた、とも言えそうです。彼は体細胞クローン動物をアメリカツメガエルの幼生を使って世界で初めて成功し(1962年)、分化した体細胞の中に再び一個体を発生に導く遺伝情報がすべて保存されていることを実証しました。40年後、山中伸弥教授の人工多能性細胞(iPS)の作成へと導く伏線を示していたとも言えます。 2012年、2人はノーベル賞を同時受賞しました。分化した細胞が初期化(リプログラミング)されるものか否かが、問いの原点でした。

受精卵に由来するES細胞(胚性幹細胞)は、実験材料とするには倫理的な問題がありました。山中教授らはマウスの皮膚(線維芽)細胞に共同研究者の工学的なシステム思考で4つに絞り込んだ遺伝子(山中ファクター)を導入することで、多様な分化能力を備えた、再現性のある実験系を作り出すことに成功しました。

一連のクローン技術は、①絶滅危惧種の保全、②有用性のある遺伝子プールの保全、③難病及び不妊治療など、人類が抱える難問に対処できる可能性を秘めています。さて、初のクローン技術の口火を切ったガードン教授ですが、83歳になる今もほぼ毎日、実験を欠かさないそうです。当代一流の科学者である彼をもってしても、彼の最初の実験が今日に至る再生医療への道と繋がろうとは、予想だにできなかったそうです(宮本講師談)。

寺岡正裕会長の計らいで実現した今日の講演会ですが、高校教員にとって半世紀にわたる生物科学の潮流を振り返り、大学研究室との繋がりを垣間見る機会を頂戴しました。加えて、大阪府下の高校で世代交代が進む中、若手教員が積極的に質疑に参加していた姿勢に頼もしさも感じました(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

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画像・左:ノーベル賞受賞時のガードン研究室の様子(宮本講師の講演から)、同・中:宮本講師の研究グループ(パワポ画面の左に立つご講演中の宮本講師)、同・右:宮本講師が所属する近畿大学生物理工学部の紹介

付記:時代の要請で、胚培養士と言う不妊治療に欠かせない社会的な需要のある高度な資格も生まれたきたそうです。医師でも担当できない専門技術だとのことです。高校は義務教育課程と高等教育及び実社会を繋ぐ重要な立ち入りにある教育機関です。単なる受験選抜のためではなく、大学や社会が今、何に直面し、何を必要としているのかを掴み取り逐次、その期待に応えていく高校本来の教員としての職能的な責務があると感じています。

大阪府高校生物教育研究会は、自主的に教員同士が集まって作られた任意団体であり、公立・私立の区別なく情報を共有し、生物教材を頒布し合う場となり、もう65年目を迎えています。 株式会社立のルネサンス大阪高校も開校して満3年という新参ですが、大阪の教育特区にできた一条校として、構成員に加えて戴いております。

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