私が愛読した入門書から微生物界の秘境へ(2017年11月09日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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私が愛読した入門書から微生物界の秘境へ(2017年11月09日)

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私が愛読した入門書から微生物界の秘境へ(2017年11月09日)

私が愛読した入門書から微生物界の秘境へ(2017年11月09日)

スーパーサイエンスコース担当の竹内です。以前、十三干潟のヨシ枯死体から真正粘菌を分離しようとして粘液細菌(緑色の子実体)を分離してしまった話を紹介した。今回、稲ワラ(滋賀県で岩田くんが採取)からも分離できないかと考え、前回と同じようにタッパー容器に寒天を流し込み固化させた後、稲ワラを置き、霧吹きで湿らせて放置しておいた。

粘液細菌は植物遺体など、他に利用しやすい栄養源のない条件下で難分解性の高分子有機物(時には自己と同種の細胞、あるいは他の細菌の菌体)を利用して貪欲に栄養摂取する。逆に、他に利用しやすい栄養源があっては他の一般の細菌に圧倒されてしまうのだ。それゆえ栄養源となる植物遺体の他はプレーンな寒天だけを保湿性の媒体として用いている。

この集積培養系では、稲ワラから滲み出す有機物と寒天を溶解させた(汲み置き)水道水中に含まれる微量なミネラル類が加わり、主に枯死した植物体に着生していた微生物が滲み出たエキスを栄養として枯死体上および寒天層で、カビなどと混在しながら粘液細菌が生育してくる。十分な時間が経過している場合、粘液細菌が生育した証拠として植物遺体上や寒天培地上に着色した子実体を作る。

子実体はキノコに相当する組織構造であるため粘液細菌は当初は、植物・菌類の研究対象であった。今では細菌の一種だと認識されるものの、やはり複雑な生活史を持つ未解明な部分の残る細菌グループである。研究者は何か他の対象を研究している途上で粘液細菌らしきモノと遭遇することがあっても厄介者扱いし、見て見ぬフリをして研究対象にすることを先送りしがちである。その意味では。微生物の世界で最後に残された"秘境"だと言っても過言ではない(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

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画像・左:タッパーで湿室をつくり、保湿用の寒天上に被検査用の基質(ここでは、稲ワラ)を置いて密閉する(時々、霧吹きで水分を補給する)、同・中:稲ワラ(ストロー)の側面に形成された粘液細菌のオレンジ色をした子実体(左上の嵌め込み図は、粘液胞子体を示す;中の胞子が発芽して栄養細胞となる)、同・右:中学時代に愛読した私の微生物入門書『微生物界の探検』(ワシリコフ著、理論社、1962年翻訳出版、原著はロシア語、1959年刊)

付記:先週、プレスクールの一環で理科室へきた中学生に微生物の純粋分離法を手解きしました。私自身が中学時代に愛読した入門書に書かれていたテクニックを独自に改良してきた手法でした。そこで当時の本の書誌学的な記載(書名、著者名、出版年など)を確かめようと検索したら、何とアマゾンで1冊古書が取り扱われていることを知りました。既に絶版ですから、これを逃したら二度と手に入れることは困難です。

自分が購入した本は以前、ロシアへ留学経験のある微生物学者の清水潮先生*1 へ貸し出してあり、返却するとの清水先生からの申し出をご辞退したままでした。まさか自分が再び中学生を相手に微生物学の手解きをするとは夢にも思わず、自分の微生物学入門の原点でもある同書を再度、手に入れたいと思い、原本480円に対し、送料込みで約10倍のプレミアムがついていましたが、居ても立っていられず最近、再入手した次第です。

*1 京都大学農学部水産学科のご出身。千葉大学腐敗研究所を経て、東大海洋研究所(中野区南台)に長く、最後は広島大学生物生産学部にご奉職された海洋微生物学の第一人者。英国およびロシア(旧ソ連時代)への留学経験のある国際派科学者。私自身は門外であるにも拘わらず、歴代の一門の教授陣の皆様には同じく、お世話になりました。ここに謹んで御礼申し上げます(竹内記)。

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