理科室ゾウリムシ消滅事件「ミステリー」の謎解き(2016年05月03日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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理科室ゾウリムシ消滅事件「ミステリー」の謎解き(2016年05月03日)

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理科室ゾウリムシ消滅事件「ミステリー」の謎解き(2016年05月03日)

理科室ゾウリムシ消滅事件「ミステリー」の謎解き(2016年05月03日)

この間、スーパーサイエンスコースの2年生・河脇凌くんに理科室へ風に乗って飛来したアブラムシの謎解きでは、してやられました。今回、私が大型連休の谷間に発生したミステリー事件の解決に迫ります。題して「理科室ゾウリムシ消滅事件」です。

理科室では、授業で使う生物教材としてゾウリムシ(楽知ん研究所・宮地祐司先生からの譲渡)を培養し、保存しています。時々、藁の煮汁を更新して植え継いでいるのです(継代培養と呼ぶ)。それが、いつもより煮汁の色調が黄色っぽい上、泡立ち気味で、心なしか「ヤバイかな」と感じました。そこで検鏡(顕微鏡で観察すること)すると、大半のゾウリムシが弱り始めて、死滅していました。何らかの異変が培養液の中で起こっていることを示唆します。

位相差でゾウリムシを観察すると、全身の繊毛が逆立ち、細胞の一部が破裂しています。先に死んだ個体では細菌が付着して分解し始めていました。これに似た現象を私は見たことがあります。それはゾウリムシの運動を阻止するため薄めた食酢を添加して動きを弱めることがあるのですが、添加量を間違えた時に見られる症状にソックリでした。

そこで、私は培養液の酸敗(腐って酢酸などの有機酸ができる現象)を疑いました。その可否を知るため、pH指示薬のBTB(ブロモチモールブルー)粉末を微量、分取した培養液に添加しました。そうすると、ゾウリムシが生きている一代古い培養液とゾウリムシが死に始めた新しい培養液とでは呈色反応に差が生じ、前者は中性(緑色)だが後者は酸性(黄色)であることが判明しました。培養液がpH4程度の強い酸性条件に変化していては早晩、ゾウリムシは全滅してしまいます。

さて、どうしていつもは簡単に継代培養できるゾウリムシが今回は、失敗したのでしょうか? その原因は液体に対して固体の分量が若干、多かったからです。本来はゾウリムシの餌となる細菌を増やすための抽出エキスでしたが、酸欠をきたし酵母や乳酸菌が増えて発酵が始まってしまった模様です(泡立ちは発酵を、培養液の黄変はpH低下を示唆します)。

ゾウリムシの飼育瓶なるはずの容器が、藁の分量が僅かに多かったため家畜の牧草などを保管しておくサイロに似た条件になり、培養液がサイレージ(飼料発酵物)になってしまった様子です。これにて謎が解けました。Google 検索で藁と乳酸菌の関係を検索すると、バイオマス再利用として牧草や稲藁を発酵させ、栄養価を高める酪農技術が研究されていることを知りました。

私は生物教材としてゾウリムシ培養のため藁の煮汁を作っていましたが、一歩、間違えると酪農分野のサイレージの研究に転じてしまうのです。これほど1つの分野の知見は、他の分野の知見へと対象は離れているものの水面下で繋がっていることが分かります。今回の異変は、藁の煮汁をつくる時の藁の分量が若干、多過ぎたことが招いた失敗例でした。しかし、将来、植物性の乳酸菌も研究対象に加える計画を立てていました。思いがけない偶然から、その一つの入口を見せて戴きました。

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画像・左:培養液の外観及びpH呈色(左が古い培養、右が新しい培養)、同・中:ゾウリムシ生存個体(位相差)と同遺体(サフラニンで染色した標本)、同・右:グラム染色した標本(左上から時計回りの順序で、①酵母様の細胞、②糸状菌の菌糸、③疎らな乳酸桿菌、④やや大きめな乳酸球菌)

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