アート&サイエンスコース
2016.06.26.Sun
6月25日(土)、水生生物センター(寝屋川市)にサポートスタッフ講習会『淡水二枚貝イシガイ類について知ろう!』でイタセンパラなど、タナゴ類の繁殖に産卵母貝として必須であるイシガイ類について学べる貴重な機会がありました。
講師は名古屋市出身で岐阜大学で9年間(学部・大学院)をイシガイに青春を捧げ、地方独立行政法人大阪府環境農林水産総合研究所に技師として採用となった近藤美麻(みま)さんです。 2014年4月から大阪勤務ということで、何と私が広島の呉高専から大阪へ転勤した頃、すなわちルネサンス大阪高校の発足と同時期でした。大阪校がイタセンネットに加盟したのが、私の着任初年度末で、その頃から近藤さんは事務窓口をされていましたが、まさか新規採用者だとは知らず、しかもタナゴ類の生態を知るにつれ、私は淡水産二枚貝の秘密を知りたいとアンケートで希望したところ、同センターに適任の専門家が採用されていたので、驚きでした。さすがは素晴らしい採用人事だと感心します。
ご専門は水産学と思いきや、"水田生態工学"ということです。水田地帯の用水路に生息するイシガイが対象で、岐阜を拠点に北は北海道から南は沖縄まで追いかけてきたそうです。博士論文の表題は、『水田地帯に生息するイシガイ科二枚貝の保全に関する研究』で、博士論文は岐阜大のリポジトリーから、研究論文もJSTのサイトから無償でダウンロードできるように公開されています。
この時期、ちょうどイシガイの産卵時期だということで、グロキディウム幼生をナマで顕微鏡からスクリーンに投影して見せて戴きました。何とイシガイは雌雄異体でオスが放出した精子球をメスが取り込むと受精して体内で発生した同幼生を塊状に放出する形式で繁殖するそうです。そして、放出された同幼生(プランクトン生活)は既に二枚貝の原型(開いた状態)を見せ、貝殻を閉じるようにして魚のエラやヒレに寄生し、どうやら毛細血管から栄養を摂取し、稚貝としての体制を1~2週間で整え、内蔵や筋肉など独立生活できるようになると、底質に着底する(ベントス生活)そうです。しかも、この貝と宿主との関係で産卵に係るタナゴでは成熟せず、他の遊泳力に富むオイカワなどに寄生すると95%ほど変態率を達成したそうです(近藤さんの博士論文から)。宿主関係には、抗原抗体反応が関係し、せっかく寄生しても免疫的な障壁が妨げとなり栄養摂取できない組み合わせが起こるそうです(ただし、免疫的な阻止も長期にわたるのでもない模様)。いずれにしても、生物の多様性が担保されていないと生態系が機能破綻してしまうという複雑な関係が築かれていたという絶妙な(と言うより神妙な)仕掛けに感銘を受けました。
こうして自然界の謎を解き明かす一角に切り込んだ意味で、博士論文の価値が大いにあり、スタッフが充実している大阪府の淡水魚研究としてのメッカ足る水準には脱帽いたします。
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画像・左:講習会オープニング(近藤さんのご講演、右上はイシガイ標本)、同・中:顕微鏡画像を投影中の近藤さん、同・右:最新型の倒立顕微鏡とグロキディウム幼生(左上、二枚の殻の先端に黒い爪状の構造物が見える)
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ルネサンス高等学校 (大子校)
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ルネ大阪広報
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ルネサンス高等学校グループは、全国に3校(茨城、愛知、
大阪)、連携キャンパス及び受付・相談センター(東京・新宿代々木、神奈川・横浜、愛知・豊田、名古屋、大阪・梅田、広島、福岡)
を置く広域通信制高校です。
どんなタイプの方でも、安心して学習し卒業できるシステムを構築し、生徒一人ひとりのライフスタイルに合った"学び"を提供しております。
「登校してしっかり学ぶ」「友達を作って学校生活を楽しむ」という学校が多い中、最短年4日の登校で高卒資格が取れる学校は多くはありません。
一方で本当に高卒資格が取りたくても、仕事が忙しくて登校できない、子育てで手が離せないなど様々な事情で、学校に行きたくても行けない方がたくさん居るのも事実です。
ルネサンス高校はそういった方のニーズに答えるために生徒に負担のかからない授業やレポートシステムを作り、14年経ちました。卒業生も約15,000名となります。
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