唯一解の弊害:カルシウムが溶け出すのか?(2018年09月22日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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唯一解の弊害:カルシウムが溶け出すのか?(2018年09月22日)

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唯一解の弊害:カルシウムが溶け出すのか?(2018年09月22日)

唯一解の弊害:カルシウムが溶け出すのか?(2018年09月22日)

サイエンスコース主幹の竹内です。日本の学校教育は、試験問題には「唯一解」があることを前提に設計されてきました。大学入試でも、間違いが明らかになると大騒ぎで謝罪に追われます。僅差の得点差が入試の合否を決める分水嶺 *1 だとして基準値を開示している大学もあります。如何にも公正であるかのように聞こえてきますが、果たしてそれが入学選抜の手段として妥当だったのでしょうか?

*1 欧米の入学選抜では、僅差の点数に拘る受験生も採点する大学教員も非人道的とする合意形成の下で、日本とは異質な選抜システムを確立してきたが、日本社会は人間ではなく数字に受験生の選抜を決めさせて、鑑識眼を養うべく教員としての重要な責務や権利を放棄してきたと言える。

実は PISA 試験(OECD生徒の学力到達度調査)でも一時期、出題傾向が変わり、「正反対な解答でも理由との組み合わせが妥当であれば、正解とする」新しい出題が導入されたり、記述式問題に対し日本の生徒がほとんど白紙状態で追随できない脆弱さが指摘された報告書を読んだことがあります。日本が国際的な順位を一気に落とした時期で、OECDは「求められる学力が推移していくことを日本は学ぶべきだ。」という指摘をしていました(OECD議長から内閣総理大臣に報告書が手渡されていた)。

以前、高専に来ていたベトナム出身の留学生が柔軟な思考法を身に着けていたので、その理由を尋ねてみたことがあります。彼は一分野に秀でた生徒ばかり集めたGifted Schoolで"open question"と言う唯一解を求めない教育を受けて来ていました。ベトナムでは、そのような教育が大学付属校で1960年代半ばにはスタートしており、公立高校でも早いもので1950年から最近(2011年)に至るまで開校しています。その間、日本では偏差値を重視した「受験産業」が日本中を席巻してしまっていたのです。

実務に従事してきて、いつも私は首を傾けなければならない事態を、しばしば経験しました。都庁では、硫酸塩還元細菌の培地を10種類を検討してみたところ、うち3つしか使用に耐えないことが判明しました。米国発が1点、英国発が2点で、日本発のは私自身の手で却下しました(私の駆け出しの頃の研究成果です)。JICAでタイに専門家派遣された時も、運河の水が黒い理由が、水質の汚れではなく熱帯特有の水生菌が繁茂し、水に黒い濁りを与え、熱帯の強い日差しを遮光して生命を保護している図が浮かび上がりました。

日本では、一つの学説や認識が唱えられ、権威や常識として一旦、定着してしまうと最後、後からそれを正すこと(覆すこと)には非常に困難が伴う社会風潮が根強い。辞書や百科事典、教科書や参考書、果てはJIS規格の試験方法でさえ、誤りを訂正できないまま定着してしまうのだ(JIS改訂委員を務めたこともあるが、提案しても変えられなかった)。この原因の一つに、「正解が一つしかない」という学校教育による刷り込みが日本人には根強いのではないかと思える。実際は、唯一解に誘導する教育を続けていくと、学ぶ側も教える(採点する)側も思考が段々と硬直化して行き、真の意味で賢く*2なれないのです。

*2 英語圏では、賢いの意味を"clever"と"wise"に分け、前者はキツネのような人を騙す狡賢さのニュアンスを含み、後者は「賢人」としての思慮深さを強調している。日本語には、両者を分別する意識がない。

前回、汽水産の巻貝、イシマキガイの貝殻に何者かによって穿孔された痕跡があることを指摘しました。同じ現象が、微小貝のカワザンショウガイでも観察されたので、ここで再び取りあげることにしました。このような巻貝の殻頂部が欠損する理由は、汽水産の巻貝が淡水に晒されることによってカルシウムが溶け出す*3かのようなニュアンスで書かれている記述が多い。それは果たして、ホントなのでしょうか?

*3 鑑賞魚や水族館などの水槽(アクアリウム)では、飼育中に有機物の酸敗や窒素系の排泄物が硝化に伴い酸性化する傾向にあり、それを緩和するためサンゴ砂や貝殻を入れておくことが多い。こうすると、酸性化した分だけ石灰(炭酸カルシウム)分が溶け出し、中和が起こる。

英国の大学院修士課程の授業を見学させて貰ったことがあるが、ある日、「実験で大切な要件は何か?」を問う発問を講師は、出席者の全員に端から問い続け、最後は私に振ってきました。無論、先に解答された答えと別の解答案を思いつくなり、考え出すなりしないとならないので否応なく頭はフル回転します。毎回の授業がこうではなくても時々、このような頭の「柔軟体操」を仕掛ける工夫が施されていました。

このような教室文化の下で育てば、自ずと可能性を枚挙する習慣が身につきます。日本の教室環境の下では、生徒が「思考停止」してしまうのも当然でしょう(考えさせようとする仕掛けにも、乏しい)。従って、辞書から試験方法まで「右へ倣い」で、行き着くところまで行ってしまうのも当然でしょう*4。日本の学校教育で行われてきたのは実際には「訓練」の類であって、人を育てる「教育」に値しないのではないかと違和感を抱きます(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

*4 炭酸カルシウムを主成分とする汽水産巻貝(汽水域と沿岸海域を両側回遊する生活史を持つ)の殻がカルシウムが足りない淡水が増えたことで、果たして溶解し始めるのか? 石灰岩が酸性雨で溶けることは考えられるが、海水中には各種塩類が溶け合っていて緩衝作用も強いのでpH値の安定性は極めて高い。一部、二酸化炭素を極度に溶解させた実験系で海産動物のミネラライゼーションに影響を及ぼす可能性は「海洋酸性化」問題として提起されている(生物種によって異なり、海洋環境が酸性化してもカルシウム沈着作用の代謝系にフィードバックが掛かるとの実験データも公的機関からリリースされている)。

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画像・上段左:死んだカワザンショウガイの貝殻にたむろする原生動物(白い矢印で示す)、同・上段中:塩素水で洗浄済みの貝殻の穿孔された部位4態(上段は10倍、下段は20倍、丸太のように見えるのは、爪楊枝)、同・上段右:大発生した原生動物*5(ゾウリムシに似た形状であるが、前後の繊毛が剛毛化している)、同・下段左:糸状性細菌が優占してネットワークを形成;対物20倍の位相差で暗視野検鏡)、同・下段右:同一の標本をフクシン染色で染色(稀にグラム陽性菌が混在するが、大半がグラム陰性菌)

*5 動画を撮影したが、原生動物の移動速度が速すぎて追いつかない(明視野暗視野)。

付記:卵殻や骨はコンポスト化しやすいが、貝殻は堆肥化に向かないとの情報が見つかった。それゆえに各地に貝塚があるというのは、陸上環境では分解されにくいのであろう。しかし、川や海、湖の底が貝殻だらけでもないのには、水環境での方が貝殻の分解が部分的にでも進むであろうことを予期させる。貝殻を燃焼すると「焼成カルシウム」が形成される(化学式)。焼成カルシウムは水に溶けると、強アルカリとなり、その殺菌効果の利用価値が注目されたきた(神奈川工科大・澤井淳教授による総説、高校生向け動画)。今回、見つかった多数の原生動物やネットワーク状に見えたグラム陰性細菌は、おそらく貝殻を穿孔した真犯人ではなく、巻貝の肉質(中腸腺)などを栄養源として二次的に増殖してきた微生物群集かと思われる。

貝殻を穿孔している真犯人は、巻貝に密着して生息する少なくとも酸を分泌する乳酸菌の可能性が高いと思われる。真っ黒いヘドロを形成するために必須は硫酸塩還元細菌の基質として乳酸が介在することは古くから知られているが、自然界に分布する乳酸菌(または類縁菌)は、ほとんど研究されていない。東京オリンピックが開催された時代の隅田川は「ドブ川」状態であり、そのような極度に汚濁した環境では乳酸発酵と硫酸塩還元反応が共役して起こっていたとされています(手塚泰彦・滝井進・北村博、1963)。現在は、当時ほど河川が汚濁することはあり得ないので、普遍的に分布し得る乳酸菌(または類縁菌)が巻貝が分泌する有機物を頼りに局在する形で付着して酸を分泌しながら殻を穿孔している可能性がある。

依然として食中毒の病原菌・腸炎ビブリオ及び類縁菌も候補に残る。ビブリオ属は海洋細菌だという固定観念はあるが、汽水域の何処かに潜んでいる可能性が残り、巻貝や二枚貝が"プール"となっている疑念も拭い切れない*6。大腸菌を凌ぐ倍加時間が10分間と2倍に迫るとのデータもあり、培地に植えた直後から酸を生成するほど増殖は速やかである。巻貝の穿孔は野生状態から室内での飼育に持ち込むと、加速される傾向なので、閉鎖的な環境で特定の微生物が一挙に増える可能性も高くなるものと目される(竹内記)。

*6 実務の視座では、腸炎ビブリオが好塩性の海洋細菌という教科書的な記載も疑わしい。むしろ汽水環境に適応していると見た方が妥当である(信頼できる謎解きが公表されている)。しかも、高い増殖速度を支える栄養要求を求めるなら、貝の中腸腺はピンポイントでビブリオ属の高栄養な棲み場所になり得る。どうやら中腸腺は完結した消化器官ではなく、外部から細菌を取り込んだり吐き出したりしている開放系と捉えた方が相応しい。

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