混沌とした地理学から得た「学び方」を学ぶ(2019年06月02日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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混沌とした地理学から得た「学び方」を学ぶ(2019年06月02日)

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混沌とした地理学から得た「学び方」を学ぶ(2019年06月02日)

混沌とした地理学から得た「学び方」を学ぶ(2019年06月02日)

教育デザイン室長の竹内です。いま、学校教育の潮流が変わろうとしています。全体から見たら僅かな比率かも知れません。一夜にして変わると言う性質でもありません。しかし、確実に流れが変わり始めたのを感じます。端的に言えば、老舗の味が不変なのは構わないとしても、次世代の人材育成する使命があって然るべき学校教育が、テコでも変わろうとして来なかったことに驚きを通り越し、憤りを経て、果ては呆れてしまいます。

入試制度など具体的な教育課程なら結構、目まぐるしくコロコロと変わりました。が、本質的な学習方法の吟味となると、手付かずのまま歳月が無闇に過ぎ去って行った感があります。日本の学校教育に大きく欠けていたのは、「学び方」に対する学び *1 でした。ここが「根幹」であるのに「枝葉」への拘りに終始してきた感が拭え切れません。学窓を離れ、実社会へ出てからも学校で一旦、植え付けられた幻想は暗い陰を落として行きます。

*1 狭義ではスタディ・スキルズ(study skills)と呼べますが、広義では「学び方」が転じて「生き方」です。自己を振り返っても、大人でも「生き方」を真っ当に論じることは、どうですか? 滅多にないでしょう?

私の場合、学部教育の最初を現在の専門である「生物学」ではなく曖昧な「地理学」から入ったことが、今に思うと幸いでした(当初は、恨みつらみでした)。(以前はあった)大学の教養部(旧制高校の名残り)で、入学後に私が当時の学科の新入生の世話役教員だった中村和郎教授が新入生を車座にして問い掛けてきた質問は鮮烈で、今でも忘れません。「キミたちは、地理学を何だと思う?」だったのですから・・。

それまで通常、「教わるモノ」と思い込んでいたものが、学び手が自由に考え出して構わない。それが「学問」と言うものだ、と意識が180度、ひっくり返ったのです(コペルニクス的転回)。今にして思うと、縛り付けていた呪縛は解かれ、私が現在、行っている実践も皆、この延長線上にあると気づきます。

以来、必要とあれば新しい概念や用語*2も作り出し、新しい試験方法*3を生み出すことに私は全く抵抗感がなくなりました(もちろん、節度は心得ているつもりですが)。45歳を過ぎて英国の大学院博士課程に進学し当時、世界で誰も手をつけてない機能遺伝子(nrfA)のプライマー設計から着手したマインドは、原点を遡れば「キミたちは、何だと思う?」に端を発す"自由の扉"へと導く中村和郎先生からの温かい問い掛けでした。そこには、私が憧れた英国のパブリックスクール米国のリベラル・アーツ・カレッジの風土が感じられました。

*2 活性汚泥をスカム化するスカミング(scumming)の呼称、*3 下水環境の細菌群集に向く検索表など。

もし理学部の地理学科ではなく最初から生物学科へ入学していたら、既にある生物学を習うスタイルで学んで行っただろうと思い、効率的だったかと思いますが、学問はゼロから作りあげていくものである、というマインドはきっと刻まれなかっただろうな・・と想像します。人生、何が不幸で何が幸いなのか、最後まで予断が許せません。私は、こうして「そもそも論」ができる研究者に育つ素地が整いました。

この辺りの論点に深く踏み込んできたのは、溝上慎一氏の論考だろうと共感が持てます。人によって、ちまちました面倒な議論をしているようにも映ることでしょうが、ここを避けて通ることはできますまい。

私自身は具体として実験科学を扱ってきた身なので、実例をあげます。日本の大学院博士課程への入試の選考会で、私は批判されたことがあります。私の提出した修士論文の珪藻遺骸上で増殖する海洋細菌の増殖速度が速すぎるとの指摘でした。「増殖が早い大腸菌の倍加時間は、どのくらいかね?」と問われました。教科書的ですが「20分です。」と私は答えました。「それなら、キミのデータは速すぎるでしょう。」なのです*4。私はマジに質問者に対し、「ビブリオによる食中毒を微生物学的にどう捉えますか?」と逆に質問したい想いに駆られました(英国の大学には対話がありましたが、問答無用・切捨御免の日本の大学に対話の場なんてありません)。

*4 東大海洋研の微生物部門にいた木暮一啓博士に尋ねてみたら即、「速くてイイんじゃないの?」でした。

海洋環境には増殖の際立って速いビブリオがいて、同定試験のために植え付けると、植え付けたそばから酸を生成して培地中の指示薬の色を変えて行ってしまう速やかな増殖ぶりでした。理学系の大腸菌しか扱わない研究者が無知なだけで、水産系の現場を知った研究者なら周知のことでした。今なら、ビブリオ属は環状遺伝子が細胞内に2つ持つ(エンジンを2つ搭載しているような状態)*5ことが知られています。

*5 英国で河口域干潟の底泥から染色体DNAを抽出し、電気泳動で流した時、本来のバンドの僅か上に、寄り添うように別のバンドが出ていました。当時は、"巨大プラスミド"だろうと見なされていた存在です。

大所高所から眺める「そもそも論」に立てば、腸炎ビブリオによる感染症で腹を壊す理由は、人間の腸内に生息する細菌群集より外から持ち込まれた異地性の細菌の方が一時的であれ、増殖速度に勝っているために食中毒が起こる(溶血性の菌株の場合には、腹を壊すに留まらず重篤に至るが)と説明が容易です。

私は理学部で学んだことを誇りに感じてきましたが、この母校で味わった辛酸には現場を知らない研究者の哀れを感じます。落とされたため、後に英国で博士号の研究をプロポーザルし、それが実現できたので一旦は良しとしてしますが、それでも「日本の大学人、シッカリせい。」と苦言を呈したくもなります。

高校レベルでの実験室でも、萌芽的な研究はいくらでも可能です。しかも、本格的な研究の場の上流側に位置するアップストリームなので十分に楽しめるだけでなく、専門に入る前の訓練として優れた理科教育が可能だと見ています。この基礎を作っておかないと折角、大学の研究室へ入っても小間使いで終わります(それが大学研究者らの目当てならば、仕方ありませんが・・)。 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業には巨額の資金が投入されていますが、効率的ではない疑義があります。それら全てが無駄だとは言いません。が、安価で優れた学びになる金鉱脈が隠されていると、まだ発掘されてない本来の高校教育に対し、新たな可能性の片鱗を私は見つめています(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

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画像・左:大阪校が開校した2014年秋の生徒研究発表会(活動紹介部門)で初めて発表した時のポスターで、カビの巨大コロニーの表と裏が疎水性の面で分化していく現象と理由の説明をした試み(記念に理科室に展示してあるポスターを撮影)、同・中:KJ法で名高い川喜田二郎氏の著書『野外科学の方法』の中の"W字型"の探究過程(仮説発想・仮説検証)を説明した図、特に前段の"仮説発想"型の教育手法が今でも手薄、同・右:先駆的かつ独創的な人文地理学者であり、文化人類学者でもあった川喜田二郎氏が辿った足跡が偲ばれる本人の2009年没後、2010年に出版された回顧本。川喜田氏の"移動大学"も今、ミネルバ大学として息づいている。

付記:日本の高校教育に欠け、高等教育での結実の妨げになっているであろう、ささやかな観察と実験を通じて幾らでも磨ける「研究萌芽の見つけ方」を川喜田二郎氏の先駆的な独創性に倣い、生徒と今後、体系化していく方策を今期、進めて行きたく思います。総論と各論(事例集)の二部構成になるかと思いますので、卒業生及び在校生はご協力方、よろしくお願いいたします。学校で新しい価値を生産する学びを始めましょう(竹内記)。

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