新しい細菌培地を開発研究するコツとツボ(2020年05月18日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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新しい細菌培地を開発研究するコツとツボ(2020年05月18日)

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新しい細菌培地を開発研究するコツとツボ(2020年05月18日)

新しい細菌培地を開発研究するコツとツボ(2020年05月18日)

短期間の開発期間ですが、6月以降、使う新しい培地を考案してみることを決めました。新しい取り組みをしてみたら必ずや、何がしかの新しい知見を得て経験値を積めるのが過去の実感でした。

例年『身近な水環境の全国一斉調査』(全国水環境マップ実行委員会;河川基金助成)に参加してきました。今年は開催するか心配でしたが、6月中に河川で実施するスタイルなので決行と決まり先日、水質分析キットと調査票からなるパッケージが郵送されてきました。基本は、河川水の有機汚濁指標のCODの簡易分析(パックテスト)と気温・水温が必須であるが、任意で追加項目を測定することも推奨されています。今回は別途、河川水中の大腸菌群(手法確立済み)と新たに河川水中の乳酸菌を半定量的に検出することにチャレンジします*1

*1 新しい挑戦をするコツは、半分は上手く行くことが解かっている項目を、残りの半分は上手く行くことが確定ではないが目標を掲げて挑戦する項目を併記するコトです。この設計思想は、英国の大学院PhDプログラムに学んだモノで、挑戦者を絶やさないため英国の大学では全てのデータがネガティブ(失敗)に終わったとしてもPhD(博士号)を授与すると言う前提でスタートする理念を掲げています(世界で唯一だと説明されました)。無論、理念はあくまでも理念で、挑戦心を損ねないのが意図で、現実的には軌道修正して行くのが通例です。

コロナ禍で接触する機会を断たれていた在校生や新入生の住む近くの河川へ出向いて、調査地点で落ち合うスタイルを想定しています。よくある「家庭訪問」ならぬ稀有な「河川訪問」です。梅雨時なので、具体的な日程は天候(特に、前日と当日の降雨の影響は避ける)を考慮しての実施となります。

河川の乳酸菌用の培地処方に関しては開発期間が限られているので、既成の培地を基礎培地に、乳酸菌が検出できるように修正を加えています(常套策です)。当コースでは過去、野菜の塩漬けから(植物性)乳酸菌を検出してきました。河川水中に分布している乳酸菌も植物由来の乳酸桿菌に近いと思われます。そのベースラインに魚類や巻貝など動物が排泄した消化管に由来する乳酸球菌の分が加算されていくものと予想されます。ここから先はもう未知の領域となります。

私の卒業研究のテーマは硫酸塩還元細菌の生態学であり、学生時代に目にした文献の中に汚濁河川水中に乳酸菌の介在を示唆する文献(手塚・滝井・北村、1963)を見て、驚いたものです。結局、私が愛用することになった硫酸塩還元細菌の培地は、後に客員することになる英国Leeds大学のDuncan Mara教授が食品衛生試験用ISA培地(PostgateのF培地)を硫酸塩還元細菌用に改変した培地であり、彼らが採った手法に準じ、開発期間を短縮させて行く作戦を採用しています。

既存の市販培地をベースに新しいゴールへ向けて最適化していく手法を実践的に開発過程をご披露して行きたいと思います。同時に、結果を考察する際に派生する問題についても言及して行きます。実践活動を通じて得たスキルが、実社会で活躍して行く上での素地となって行くのです(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

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画像・上段左:陸水学会近畿支部から配布された『水環境のCOD調査キット』一式、同・上段中:果物や野菜には内生菌(endphytes)が存在している(左:ブドウに酵母、キュウリに乳酸菌、ゴボウに菌類)、同・上段右Postgate 教授の成書 "The sulphate-reducing bacteria, 2nd ed"(1984年刊)の中表紙とF培地の記載、同・下段左:初めて硫酸塩還元培地を培養した頃の画像(右は、純粋培養に成功した例)、同・下段右:嫌気性フィルム(PT)パウチ法*2で簡易嫌気培養。

*2 嫌気性フィルム(PT)パウチは当時、九州でカラシ蓮根(ボツリヌス菌食中毒)事件を報道していたTVのニュースを見た東京都水道局水質センターの田口幸夫さんが目ざとく細菌検査中の光景を目にして、TV局や地元の衛生研究所(保健所だったかも知れない)へ照会し、製造元(酒見医科機器舗、大阪)から取り寄せて戴き、硫酸塩還元細菌(特に、純粋分離)に使いました(ラミネート素材の選別から着手した酒見氏と交流がありましたが、現在は取り扱ってない模様。大阪府立大学の坂口玄二先生の門下です)。

付記:少なくとも2つ異なる処方の培地を比較検討することで、何かを学び取れます。次に思い切って10種類の培地を比較してみたら正直、驚きました。全く使い物にならない処方も試験方法の中に掲載されていたからです。その後、3種類の培地に絞り込んで精査して行きました。米国のスタンダート・メソッドの処方は肉エキスを使った古臭い組成でしたが、試してみると案外、使えるので驚きました(キチンと検証して「捨てがたい」と判断して掲載した形跡を感じます)。

もう一つはPostgateのE培地と呼ばれるスタンダートな処方です。唯一の難点は沈殿が沢山できることで、コロニーを形成させる培養法との相性が悪く、不向きでした。3つ目に残った候補はPostgateのF培地にも収録された培地で、沈殿を生じないのが利点です。しかも、通常は7日間以上の培養期間を要するのに、3日間程度で済んでしまうほど立ち上がりの良い培地でした(ベースの培地に含まれていた亜硫酸塩が、ATPの初期消費の負担を軽減させているのを突き止めました;英語で論文発表してません! 取り組みたい生徒がいれば、応相談)。

この時の試験結果が根拠となり、Mara教授が考案した培地を日本の『上水試験方法』、後に『下水試験方法』にも掲載されることとなりました。確認のため考案者のMara教授の所在を探し出し、「先生の処方を日本の試験方法へ採用します。」と英文原稿を添え、Leeds大学へエアメールを差し出したのが、私と英国の縁の始まりでした(原稿の英文も添削して戴けました)。Mara教授は熱帯下水道の世界的権威*3でもあったので、私が後にタイの下水道事業の技術移転(TCSWプロジェクト)へ参画する動機になりました。

*3 途上国向け著作(2004年)"Domestic Wastewater Treatment in Developing Countries"(Earthscan)はPDFファイル(全310ページ)として無償で公開されています。ただし、Mara教授らの経験はアフリカと中南米で、熱帯モンスーン圏の下水道(中本・竹内、2002年)が抱える事情とは異なり、地域特性によって下水道の普及が絶対的に優位でもないと知りました(Ecological Sanitation、1998年、Sida)。世界銀行環境顧問の故・Robert Goodlandと国連機関誌 "INSIGHT" の記事を通じて個人的に繋がれたのも、この頃でした。

10種類の培地を性能比較した経験を通じて、自ら試験方法を提案できるノウハウを蓄積することになりました(学校で教わったのではありません)。源流点まで遡ると、小学校でマンガを知ると、自分もマンガ作品を制作したくなった気持ち。それと、小学校で「折り紙の折り方」を例に説明文を書く課題があり、当時の私は説明文を"作業工程"を次々と書いていく作業を体験して、その楽しさに味わった記憶があります。案外、そうして味を占めたコトで、試験で点を稼ぐ勉学より、価値を生み出す生産の喜びを知ったんだと思います。こんな文面を書いていたら、遥か遠い昔の追憶まで手繰り寄せることができました(竹内記)。

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