宇宙への道
2017年4月4日
著者:長谷川 高士
~東京理科大学の宇宙教育プログラムの紹介~
通信制高校の生徒には、全日制の高校生に比べると1日の大半を自分の自由に使う時間がある。
その時間を活かして大学で行われている高校生向け教育プログラムに参加するという面白いことができそうだ。
東京理科大学の宇宙教育プログラム
「宇宙教育プログラム」は、2015年から東京理科大が行っている宇宙探索に必要なミニ無人機を作る実習を含む教育プログラムだ。驚くのはこのプログラムは大学生半分、高校生半分を1チームとして構成し、彼らだけで無人機(CANSAT)のソフトウェア・ハードウェアの設計やプログラミングを行っていることだ。専門学校や大学生だけで行われる「ロボコン」の宇宙版といったらいいだろうか。
宇宙教育プログラム講演会(2017年3月12日)
この実習の結果発表と、東京大学で超小型衛星開発を行う中須賀教授、NASAのアジア代表ブラッカビー氏、宇宙飛行士であり京都大学での新しい有人宇宙研究を開始する土井教授の発表と密度の濃い講演会に参加してきた。
一般的に宇宙開発技術というと、高校生のレベルでは手の届かない内容が多いと思っていたが大学との協力であれば可能性が拡がる。また、宇宙開発技術は多岐にわたる技術の組み合わせであり、チームワークも求められる。教育の一環として自分とは異なる分野の専門家と協力できる学習は、今後学習指導要領に入ってくる「アクティブ・ラーニング」としても絶好の材料である。
この教育プログラムで学習した2016年度の各チームのCANSAT実験の結果が発表された。CANSATというのは、350mlほどの缶に測定機器などを詰め込み、上空200m前後から落とす模擬人工衛星のことである。
この「人工衛星」の目的は、基本的には安定した着地と、周囲の撮影や送信、発射地点に戻るといったものだ。
残念ながら完全に期待通りに行えたチームはなかったそうだが、こうした第一歩が大学生や高校生から始められたことの価値は大きいと感じた。
【中須賀 真一 教授】

中須賀教授の発表では、少ない金額と短い開発期間で打ち上げられるメリット、超小型衛星の打ち上げに成功してから多くのビジネスチャンスが生まれたことなどが語られた。
また、中須賀研究室を巣だった卒業生が起業したり、民間企業の宇宙開発を促進するなど、民間の参入が容易になることで、「宇宙で何かをやろうと考える人の数を100倍にしたい」という中須賀教授の希望が実りつつあることも語られた。
【Christopher Blackerby氏】

NASAのブラッカビー氏の発表は2024年までのNASAの宇宙開発計画の大枠が展示された。現在のNASAは無人探査機を使った調査を主として、ジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡の計画などが説明された。
ただ、発表後の質疑応答では「トランプ政権に変わってから方針が変わることはあるのか?」と時宜に応じた問いかけがされ苦笑いをされていた。
【土井 隆雄 特定教授(宇宙飛行士)】

対照的だったのは、宇宙飛行士で2016年より京大特定教授に就任した土井教授の考え方だった。
日本では2024年以降の宇宙開発の明確な目標がないことに警鐘を鳴らし、リスクが少なく、コストも低い無人探査機ではなく到達可能な月への有人宇宙飛行のための学問を設置することで、広く宇宙への興味関心を高めたいとした。
高校生が研究所や大学で学ぶこと
これまで、高校生が研究所や大学などを訪れる機会というと日本科学技術振興財団が行っていたサイエンスキャンプが長い歴史を重ねてきていたが、残念ながら2016年度で終了してしまった。
そこで、高校生たちが学校から出て学ぶことができる機会をもっと提供できないかと探していた。しかし、この東京理科大学でのCANSATをはじめとした実習プログラムも、2017年度が3か年続いた最後の年度になる。
(事前エントリーは2017年4月4日~28日まで)
通信制という時間的な自由がある学校の環境を活かして、こうした大学での教育プログラムに応募すること等も生徒ともに考えていきたい。
- 関連情報
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東京理科大学の宇宙教育プログラム
https://www.tus.ac.jp/uc/
平成29年度宇宙教育プログラム受講生募集(事前エントリーは2017年4月4日~28日まで)
https://www.tus.ac.jp/uc/2017/03/28/1479/
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