英文タイトルを巡ってリアルな英語へガイド | 通信制高校のルネサンス高等学校

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昨年の文化祭に合わせて発表した暮田佳薫さん(3年生)の自作小説『魚の墓』の英文タイトルを巡って、ここ数日、英国在住のEFL(English as a Foreign Language)資格者とメールで意見交換をしてきました。暮田さんが作品のリメイクを終え、完結したことを契機に、改めて英文タイトルの是非が気になったからです。

スーパーサイエンスコースでは既成教材を用いず、実際に生徒が直面する課題を前面に掲げ、教員が問題解決の支援をする敎育方策を掲げています。今の時代のような情報過多の社会環境下では、情報を詰め込む学びよりも具体的な課題を設定し、それを解決していく過程で学ぶ効果が大きいからです。 敎育の要諦とは、 これから生徒が一生涯、成長し続けていくための核(コア)を植えつけていく作業だと捉えているからです。

論点は、定冠詞の"the"や名詞の単数・複数の用法です。これらは、TOEICのスコア・アップにまったく貢献することはありません。が、"英語のマインド"に迫るという意味では、母国語にない関門に拘わることこそが値千金だと信じています。

海外にメールを打つ時、私は生徒の目の前で打って、英文が出来上がっていく姿を見せます。これは学校で教科を学習した後にあるゴールを生徒に先に見せてあげたいからです。今、できるか/できないかなど、二の次です。 到達点と現地点との間隔を体感しておいて貰いたいという趣旨で、自分たちに関係のある素材を用いてリアルな英語に触れていきます。

生徒と私は、『魚の墓』というタイトルがジブリ作品の『火垂るの墓』と類似性があったことに気づき、英語で検索して英語版のジブリ応援サイトにアクセスしました。そのURLを含め、英国に住むDavidにメールを送り、意見を求めました。生徒が帰った後、返ってきたメールを読み不覚にも、私は涙が止まらなくなりました。『火垂るの墓』の英文タイトル "Grave of the firefries"に込められた定冠詞の"the"には、日本語で「蛍」を「火垂る」と表記したことに値する深い気持ちが込められていたからです。

生徒と相談し、『魚の墓』の英文タイトルは"The Grave of Fish"と訂正し、確定しました。graveに定冠詞"the"を付したのは、物語の中で「伝説」として誰もが知っているニュアンスを醸し出すためです。科学的な事実に反して複数の魚類が混じって群れる現象を著者はファンタジーとして記述したのですが、英語の正式文法としてはfishの複数はfishだというDavidの指摘に従いました(ネイティブでない科学者は複数の魚類を指す場合にfishesとしていますが、英語の文法としては誤用だそうです)。

付記: Davidから昨晩、想定外の追加メールが届きました。それは彼が文法的正当性を指摘したことに対して煩悶した経緯を伝える内容でした。それは世界の偉大な本の中には文法的に不適切なタイトルが少なからずあることを認めた上で、生徒の意思を尊重してあげて欲しいという要望でした。メールの末尾のみ引用します: I am now convinced that I should not interfere with your student's very original idea, and would be happier if she goes back to using it. 私たちは異種の魚が群れ合うことは「科学的にあり得ない」点をファンタジーの表現として活かし、原案通りの"The Grave of Fishes" に敢えて戻すことにしたのです。

画像・左:英国の自室スタジオで教材録音中のDavid、同・右:Davidの英文メールの抜粋、サムネイルは本日、公開の暮田さんの『魚の墓』リメイク版の冒頭部分です。文化祭出展版と異なり、縦書きで文章力だけで勝負しようとする文芸作品、本来のスタイルを採っています。

著者・3年、暮田佳薫さんからのコメント: David さんからのメールを受けた上で、また他にも数々の英語サイト回ったことにより、自分の中にあった疑問を皆(日本人だけでなくネイティブの人達でも)感じているんだということを、より実感できて親近感が湧きました。今回日本語版のタイトルを付けた時は直感でこれにしようと決めたのですが、英語版のタイトルを付けるのには細かいところにまで気を使ったため、英語の論理性の高さと緻密さを学ぶいい機会になりましたし、英語という言語を理解する、という面でも自分の中で理解が進んだと思っています。今回チャレンジしたことによって、今度は英語を使って作品を生み出してみたいとも思えるようにもなりました。

リメイク後の「魚の墓」はリメイク前のものより疑問を抱かせるような表現も出てくるとは思いますが、一応次回作と繋がるようにしているためそこのところはご了承ください。時間があるときでも、時間の無い時でも読んで貰えると、とても嬉しいです。

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