かつて親しんだ旧友・放線菌との再会(2017年11月17日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

かつて親しんだ旧友・放線菌との再会|通信制高校のルネサンス高等学校

メニュー
 

大阪

かつて親しんだ旧友・放線菌との再会(2017年11月17日)

サイエンスコース

かつて親しんだ旧友・放線菌との再会(2017年11月17日)

かつて親しんだ旧友・放線菌との再会(2017年11月17日)

スーパーサイエンスコース担当の竹内です。行政体の実務担当者が私の所在を探し出し、技術相談が持ち込まれました。それはホームグランドとして土壌中でほそぼそと暮らしていたはず放線菌の一種が、人間が作り出した環境である下水処理場の生物反応槽(旧称、曝気槽)で爆発的に増殖することで先ず発泡物ができ、それが活性汚泥と一緒になって水面に浮上し、塊状(スカムと呼ぶ)になる現象です*1。1985年に私が東京都職員として採用され、下水処理場に配属となって最初に遭遇した課題でした。

修士課程では海洋微生物学を専攻(学部は地理学科を経て、生物学科の卒業で硫酸塩還元細菌が卒研のテーマ)し、海洋環境はグラム陰性菌が主体の世界でしたので全くゼロからの学び直しでした。海洋細菌の分類でお世話になった東大海洋研(当時)の清水潮先生が放線菌研究のメッカだった旧ソ連へ留学経験があり、原書の挿絵を見せて戴いた。驚くべきことに放射状に分岐した菌糸が断裂し、一つひとつの断片が再び増殖し出すモンスターのような成長戦略(言わば多分裂)を備えている事実を認識しました。

*1 細胞壁にはミコール酸と呼ばれる脂質を大量に生産し、水を弾く(疎水性)。そのため菌体は水面に浮く。下水処理場は水質浄化のためエアレーションで空気を送り込むため、気泡の表面(気-液界面)に集積する。人の手で生み出した構造物が、スカムを形成する原因菌であるノカルジア型放線菌に対してホームグランドを凌ぐ格好な生息の場(ニッチ)を提供してしまったのは、皮肉と言う他はない。

当時(1992年)、この現象に対し統一的な名称がなかったため「スカミング(scumming)」という用語*2を提案しました。今では特許文書(公文書)の中にも使われており、最初の提唱者が私であったことを知る人は少ないかも知れません。研究者は先頭に立つと、実験方法や学術用語を自ら考案しないとならない場合が出てきます。無論、後に続く人の迷惑にならないよう最新の注意が必要となりますが、密やかな楽しみでもあります。教科書で決まった内容を学ぶことしか知らない高校生に、研究生活に入ると誰でもこんな実話のドラマが体験できますよ、と声を大に教えてあげたい(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

*2 英語圏では、米国のDavid Jenkins(UCBerkley)がsludge foamingと名づけたことで発泡現象を強調したフォーミングという表現が普及してしまった。ドイツのHilde Lemmerと私、竹内はスカムの生成を重くみて活性汚泥のスカム化の意味でスカミング(sludge scumming)の方を選択した。Lemmerも私と同様、自治体(バイエルン州)で実務に就いていた(彼女は後に、ミュンヘン工科大学の教授になっている)。私は放線菌ではない原因微生物が発泡現象を引き起こすという反例も提示した上で、スカミングを提唱した。私はLemmerと同年代であり30歳代の頃、フランスとドイツで面会している。今では皆、教授職を離れている。

----------

画像・上段左:採取直後の発泡性スカム(技術相談の依頼者提供)、同・上段中:依頼主から送られてきたスカム試料、同・上段右:微細気泡の気ー液界面に集積したノカルジア型放線菌の分岐した菌糸、同・下段左:グラム染色像(ナイルブルーで青色に染まる;サフラニンで赤色に染まるのが活性汚泥のフロック)、同・下段右:メチレンブルーで単染色(嵌め込み図は、増殖と生存のサイクルを図示;自著の原図から)。※一時期、日本の国内では絶滅同然となり、中国・大連市のスカムから原因菌を手に入れたこともあった。

付記:科学は、過去から未来へ連綿と続く科学者たちが織りなす行進である。ロシアのウクライナ生まれのワクスマンが米国へ渡り、彼の大学院生だったルシュバリエが放線菌の分類学の大家となり、米国EPAから依頼を受けて下水処理場で発生した発泡物から新種のノカルジア型放線菌を分離し、命名した。それがスカミングの原因菌 Nocardia amarae であった(種名はラテン語で「下水管」の意味)。その後、調べていくとノカルジア型で、ミコール酸合成能を有する菌群が該当したので、"複合体"であると指摘した(1993年)。

私が東京都に奉職していた間、スカミングが終息していくことを予感した。それは場内の土木工事が大きく関係していたことが状況証拠(疫学的な傍証)と実験結果(細菌相のシフト)から、下水道が100%普及するまではスカミングが継続的に頻発し、普及して工事の頻度が減ると収まることが予測された。研究活動を伴う科学は推理小説のような「謎解き」そのもので、知識や手法を学ぶような学習行為とは別世界である。

私がスーパーサイエンスコースで導入している教授法も「探究学習」であり、そこで会得できるノウハウは犯人探しから人生相談まで応用できる。なぜだか「創作意欲」を刺激する傾向も、認められる。歴史の流れの中に自ら身を置き、人類史のドラマにささやかながらも貢献していく創造的な体験を含むからであろう(竹内記)。

サイエンスコース

最新の記事

月別でブログを見る

通信制高校のルネサンス高校グループ > 学校 / 連携キャンパス等 > ルネサンス大阪高等学校 > ルネサンス大阪高等学校ブログ > 教員 > サイエンスコース > かつて親しんだ旧友・放線菌との再会

最新お知らせ・ブログ4件

インフォメーション

サイエンスコース

インフォメーション

eスポーツコース

 

もっと知りたい方はコチラから
「学費ってどのくらいかかるの?」
「どんな勉強ができるの?」
「本当に年4日程度のスクーリングで卒業できるの?」
「通信制から大学や専門学校の受験って大丈夫?」

資料請求はこちら
ネット出願はこちら
プライバシーマーク

ルネサンス高等学校グループは通信制高等学校です。
全国に3校(茨城・豊田・大阪)、キャンパスは7拠点(札幌・仙台・東京・新宿代々木、神奈川・横浜・豊田駅前・広島・福岡)展開しており、全国各地から生徒を受け入れております。

Copyright © ルネサンス・アカデミー株式会社All Rights Reserved.

もっと知りたい方はコチラから
「学費ってどのくらいかかるの?」「どんな勉強ができるの?」
「本当に年4日程度のスクーリングで卒業できるの?」
「通信制高校から大学や専門学校の受験って本当に大丈夫?」

資料請求
いますぐ出願したい方はコチラ
パソコン・スマートフォン・タブレットから簡単出願!!
検定料は、クレジットカード・コンビニ決済で!! 24時間受付中
ネット出願

通信制高校への入学・編入転校をお考えの皆様へ

ルネサンス高等学校グループは、全国に3校(茨城豊田大阪)、7拠点(札幌仙台東京・新宿代々木神奈川・横浜愛知豊田名古屋広島福岡)に連携キャンパス又は受付相談センターを置く広域通信制高校です。 どんなタイプの方でも、安心して学習し卒業できるシステムを構築し、生徒一人ひとりのライフスタイルに合った"学び"を提供しております。
「登校してしっかり学ぶ」「友達を作って学校生活を楽しむ」という学校が多い中、最短年4日の登校で高卒資格が取れる学校は多くはありません。 一方で本当に高卒資格が取りたくても、仕事が忙しくて登校できない、子育てで手が離せないなど様々な事情で、学校に行きたくても行けない方がたくさん居るのも事実です。 ルネサンス高校はそういった方のニーズに答えるために生徒に負担のかからない授業やレポートシステムを作り、今年で12年。卒業生も1万人を超えております。