通信制高校ルネサンス高等学校

令和7年度 卒業証書授与式 式辞

ルネサンス高等学校

令和7年度 卒業証書授与式 式辞


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 日ごとに寒さが和らぎ、皆さんがスクーリングで訪れた校庭に立ちますと、木の芽起こしの雨に春の訪れを感じるようになりました今日の佳き日に、ご来賓の皆様のご臨席を賜りまして、ここに卒業証書授与式を挙行できますことを、教職員一同、心より厚く御礼申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与されました皆さん、並びにオンラインで参加の皆さん、ご卒業、誠におめでとうございます。自分を律して進めなければならない本課程の学習を、見事に修められましたことを、私たちは心から称えたいと思います。
 この成果は、皆さんの強い意志と努力の賜物であると同時に、ご家族や友達などをはじめ、多くの方々の励ましや支えによるものでもあります。感謝の気持ちを新たにしてほしいと思います。

  さて、この3年間を振り返りますと、2年前には、猛威を振るった新型コロナウイルス感染症の分類が5類へと移行され、ほぼ以前のように生活ができるようになりました。同年には、インドの人口が中国を抜いて世界最多になったことや、ChatGPTなどに代表される生成AIが広く社会で使われ始めたことも印象的でした。他方、前年に続き、大きな国際紛争も起こり、その混迷は今も続いています。自然災害についても、昨年の能登半島地震、今年に入ってのアメリカ・ロサンゼルス、そして岩手県大船渡市の森林火災など、その頻発化と激甚化が、非常に懸念されています。科学技術やデジタル技術の進展に伴うグローバル化の中で、これまで当たり前だったことが通用しなくなり、さらに、人間の活動が地球全体に影響を及ぼすようになったことも相まって、世界はますます予測できないものになってきています。これから先どうなっていくのだろうと事ある毎に考えてしまうのは、皆さんも同じではないでしょうか。

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 今日は、そのような世界へ旅立つ皆さんに、大切にしてほしいと思うことを2つお話ししたいと思います。

 1つは、「自分で考える」ということです。今はインターネットから、必要な情報のほとんどを簡単に手に入れることができる時代です。そして、生成AIなどを使えば必要な答えだけでなく文章や書類なども瞬時に作ってもらうことも可能です。慌ただしい世の中でもありますので、必要に応じてこの便利なツールを使いこなす能力が求められるものともなっていますが、しかし、それに頼りきりになり、「自分で考える」ことを疎かにすることは、皆さんの成長に繋がらないだけでなく、折角の人生を自分以外の誰かのそれと変わらぬものにさせかねないと思うのです。

  古い日本の言葉「やまとことば」の中に、「かんがふ」という、「考える」のルーツとなっている言葉があります。これは「かむかふ」が変化したもので、最初の字の「か」は、後ろの語を強調する詞で、「か細い」「か弱い」などで今でも使われている「か」です。続く「むかふ」は「向かい合う、対面する」ということなのだそうですが、さらに遡ると「むかふ」の「む」は身体の「み」、「かふ」は「交(まじ)る」で、「身(み)交(か)ふ」となり、「自身の身を対象と深く付き合わせる・親身に交わる」という意味だったそうです。

 つまり、本来「考える」とは、未だ見えていないものを見、感じられていないものを感じるために、対象である物あるいは相手と向き合い、全身でつきあう。外から知るのではなく、自身の身に感じることを言ったのです。多様化が進む今日の社会にあって、他者を理解することにも繋がるであろうこの共感的な態度は、ますます重要になっていくように思います。

 2つ目です。中国明の時代の儒学者、王陽明が説いた言葉に「事上(じじょう)磨錬(まれん)」というものがあります。「事上」とは「実践」のことで、「磨錬」は「自分を磨く」という意味です。「日々の生活や仕事などを通して自分を磨いていくべき」という教えです。もちろん自分を高めるには、優れた本を読んだり、優れた人の話を聞いたりすることも重要です。しかし、彼は、そこに満足し留まってはならないと言います。学んだことを実践してこそ、体得、まさに身に付き、自身を磨き高めていくことができると述べています。

 この「事上磨錬」という姿勢と、先に述べました「かんがふ」というあり方は、ともに、物事を・他者を・さらには世界をも、自身の身をもって受け止める・確かめるということですので、これら2つの積み重ねの中に、他の誰のものでもない皆さんの成長があると私は思います。

  これからの未来はまた、これまで以上に個性や独自性が求められ、より生かされる、可能性に満ちた世界であるとも言われます。だからこそ、これからの皆さんの学生生活や研究生活、就職先での仕事の場面、あるいは日常の人との付き合いの中で、「自分で考え、事上磨錬する―学んだことを実践していく」ことを大切にしてほしいと思います。皆さんの、これからの限りないご活躍と豊かな人生を心よりお祈りし、贐の言葉とします。

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  結びになりますが、保護者の皆さまに一言申し上げます。本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様が大きな節目をまたひとつ、迎えられたことに、喜びも一入のことと存じます。お子様の成長を願い、今日まで支えていらした中には、ご苦労されたこともあったかと思います。その深い愛情と絆に、心より敬意を表しますとともに、これまで、本校の教育活動にお寄せいただきましたご支援とご協力に深く感謝を申し上げ、式辞といたします。

 令和7年3月8日

                                  ルネサンス高等学校長 菊池 一仁

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