アート&サイエンスコース
2017.11.14.Tue
スーパーサイエンスコース担当の竹内です。「犬も歩けば棒に当たる」と言います(オリジナルの意味でなく、現代的な解釈で)が、教科書を離れ、実物に触れれば、たとえ中学生でもささやかな、だが新しい発見に触れ合うことができます。「プレスクール@理科室」で、前回に引き続き、中3生が実験をするために理科室へやってきました。やってくれるもんです。これこそ、正解のない「探究学習」への誘いです。
前回の試料を丁寧に顕微鏡観察してみると、メロシラの糸状体に連鎖した一部の細胞の内容物が休眠シスト化(増大シストか否かは未確認)している様子が観察されました。それは藻類マットの色が初期の茶色から緑色へと変化していたことを案じていました。そこで、藻類マットを採取し、検鏡してみるとメロシラが激減していることが判明しました。メロシラの集団がある程度、増殖した後に休止期を迎えた様子が伺えます。その間に共存している他の藻類が勢力を伸ばし次々、優占種が入れ替わってしまう現象(生態遷移)を案じていました。
野外では、メロシラの大量培養で先鞭をつけた信州大学名誉教授の中本信忠先生が「珪藻は水生昆虫などの食害を受け、減少し緑藻へ移り変わっていく」現象を指摘していました。先生はまた、昔からの教科書に描かれている珪藻ブルームが春と秋の二山型になる理由は、春と秋の季節が珪藻の増殖に適しているというよりも、夏場に水生昆虫による摂食圧が高まるため摂食されやすい珪藻が先に食べられてしまう可能性を読み解きました(栄養塩の消長に着目した定説より、摂食圧を重視した視点)。珪藻のシリカの殻の方が緑藻のセルロースの細胞壁より壊れやすく、消化吸収されやすいことに着目した説です。妥当性はありそうです。そこで水生昆虫の飛来がない理科室では、珪藻が優占するものと半ば、安心を決め込んでいました。ところが、室内培養でも珪藻から緑藻への遷移(サクセション)があることを確認しました。
詳しくは、先に羽状目珪藻を維持するために水を常時、循環させている水盤型の循環培養装置の方では、ずっと褐色の浮遊物で安定していました。こちらの系では、緑藻へのサクセションが阻止されていたのです。
両者を比較すると、装置に当たる太陽光と優占している藻類との関連性は、一目瞭然でした。水盤の水循環ルートでは一旦、光の当たらない貯留槽へ循環水が落ちると、そこからポンプアップされ、上部へ圧送される仕組み(部分遮光)になっていました。すなわち、流路の途中で光が遮断される区間があったのです*1。一方、横方向の水循環ルートで作られる水槽では、流路の全工程が外の自然光に晒される設計で運転してきました。
*1 夏場、アオコで水面が覆われて遮光されると、緑藻は衰退するが、珪藻は漏れてきた微弱な光エネルギーでも利用できる。それは補助色素がアンテナ色素として使われているためである。
閃きに卓越した河脇凌くんは、理科室にあった滑り止め用のマットを遮光ネットとして使うことを思いつき、水槽に当たる日射量を抑制する対策(部分遮光)を思いつきました*2。彼の閃きは「一家に一台」のセリフを真似れば、どの実験室や検査室へ行っても、きっとアイディアを着想してくれる、そんな "頼もしさ" が実感できます(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。
*2 珪藻が黄褐色をしているのは光合成色素の種類(分子種)組成が、褐藻(コンブ、ワカメ)類の色素組成と非常に近い(ストラメノパイル)ことによります。全体的に均して眺めると、地球上で最大規模で繁栄している植物は、意外にもクロロフィルaとcを併せ持つ、この色素組成グループの植物だとされています。
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画像・左:自ら分離した培養液から生えてきた藻類を採取するプレスクールで理科室へ来た女子中学生、同・中:彼女が分離培養した培養瓶で生えてきた微生物(左:ピレノイド顆粒を持つ緑藻、右:全体に青と緑色を帯びたシアノバクテリア)、同・右:藻類培養の装置(上:水槽をマットで遮光、下:遮光部位を循環する装置)
付記:珪藻のメロシラを純粋分離したはずが、生えてきたのが緑藻と藍藻(シアノバクテリア)だったのは、実験が失敗したことを意味する。しかし、生えてきた藻類の中には、初めて目にするような糸状藍藻も混在していたことに着目したい。それは、偶然と純度の高い状態で生育してきたことから、再びこの培養液から緑藻も藍藻も各々、純粋培養を得ることも可能である。この藍藻にはブルーとグリーンが混在した特有の色素を持ち、糸状の藻体が滑り運動(撮影済みの動画を参照)をすることでも注目したい(竹内記)。
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