通信制高校ルネサンス高等学校

令和3年度 卒業証書授与式 式辞

ルネサンス高等学校

令和3年度 卒業証書授与式 式辞


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 冬の寒さに耐えてきました校庭の木々の芽も膨らみ始め、春の息吹が感じられます今日の佳き日に、保護者の皆様のご臨席を賜りまして、ルネサンス高等学校令和三年度卒業証書授与式が挙行できますことは、この上ない喜びであり、教職員一同、心より感謝申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与されました皆さん、ならびにオンラインで出席の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。
 思えば、皆さんの多くが高校生活をスタートさせました2019年の冬に、私たちは突然コロナ禍に見舞われ、皆さんの高校時代の大半がいろいろと制限をかけられる日々となってしまいました。その中でよく困難を克服し、学業を修められました。その意志の強さと努力を、私は心から称えたいと思います。

 さて、いまだに世界中が新型コロナウィルスに翻弄され続けていますが、このパンデミックは、社会の様々な面での格差や不平等を明らかにしました。そして、そこからくる分断や対立はますます深刻化してきているとも云われ、今、急がれる地球温暖化の解決とともに「グローバルな連帯や協力」が強く求められるようになりました。
 皆さんも「密」を、或いは「接触」を避ける生活が続く中で、それぞれに気づきや、幸せとは何か、この先どうしていくかなど、改めて考えさせられることもあったのではないでしょうか。そして、この2年2か月の間に、ウィルスに対する意識や態度も少しずつ変わってきたのではないかと思います。

 ウィルスは遺伝子のかけらみたいなもので、生物が誕生したときに何かの拍子で自然にできたものと言われます。皆さんの多くが生まれた2003年に、ヒトのDNAの遺伝情報の解読が完了したことで、私たちの遺伝子の約半分に、ウィルスによる突然変異の形跡がある ということも分かってきました。人類の進化は、彼らのお蔭でもあるということが分かってきたのです。

 東京大学教授・国連環境計画上級顧問などを歴任された石 弘之先生は、その著書『感染症の世界史』の中で、ウィルスが哺乳類の胎児・赤ちゃんを守っていることに触れています。
 胎児は父親と母親の遺伝子が合体して生まれ、母親の胎内で成長します。半分は「他人である父親の遺伝子という存在」ですので、そのままでは母親の体は 免疫反応を起こしてしまい、その胎内では生きていけないはずなのです。では なぜ生きていられるのか。長い間謎だったそうです。
 ところが、母親の胎盤から大量のウィルスが見つかったのです。普段は居候のように、体内で静かにしている彼らが、胎児を守る細胞膜を作ることが分かったのです。そして、その膜によって母親の免疫攻撃が働かなくなるように しているらしいのです。なんと私たちは、ウィルスのおかげで、この世に生を受けていたというのです。
 先生はまた、「庭土をスプーンで掬うと、その1杯の中に1億以上の生き物がいる。その多くがウイルスであり、彼らは、大気中でも、砂漠のど真ん中でも、深海底でも存在している。そんな彼らにとって、人体は自分が生き残る場所の一つに過ぎず、今回のコロナウィルスのように時に強毒化するのは、人間を襲っているのではなく、自分たちの生存戦略としてやっているだけ。人間が環境を変えれば、それに対応して変異していくのが彼らであり、私たちはウィルスたちとの関係を断ち切ることはできない。」とおっしゃっています。
 そして、「人類の歴史は20万年、ウィルスの歴史は40億年。彼らも、自然の一員として、いろいろなところで関与している。新参者の人間にとって、ウィルスは憎み・排除すべき存在ではなく、理解し、どう一緒に生きていくかを考えるべき存在なのだ。いかなる生物も天敵をなくした瞬間から退化していくもの。だから汝の敵を愛せよ。」と続けられているのです。

 ここで、こちらをご覧ください。

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 漢字の起源、甲骨文字です。何という漢字の起源だと思いますか?

 ...右側上の田の字は、鬼の面を表し、それを被った人が杖のようなものを手に持ち振りあげている形だそうです。鬼は「鬼神・神」としての一面もあることから、「敬う」意味ともなったとのことです。「偉大さにカシコマル」という気持ちを表わす「オソレ」という字の起源、
... こちらの3つの言葉の上の文字の起源です。
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... 右から、それぞれ
「畏敬」...「心から敬う」こと
「畏愛」...「畏れながらも親しみを覚える(感じる)」こと
「畏友」...「尊敬できる友」
...このような意味になります。

 分子生物学の第一人者である福岡伸一先生も、新型コロナウイルスにどう対応すべきかと問われて、今 紹介しました言葉を使って「正しく畏れる」ということが大切だとおっしゃっています。恐怖心を持つのではなく、自然に対する「畏敬の念」をもって彼らに接するべきであると。
 先生によれば、自然は、複雑な相互作用とそのバランスで成り立っているのでコントロールすることはできない。最も身近な自然である自分の体でさえ、自分でコントロールできないことの方が多いもの。だから、自然の一部であるウイルスも細菌も、科学の力でこれを抑え込もうとしても本質的な解決にはならない。大きな自然観を持って今回の問題も考えなければならない。」と警鐘を鳴らしています。
 「畏れる」は、英語の「The Sense of Wonder」に近い感覚であると先生はおっしゃっています。ご存じの方も多いと思いますが、これはアメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソンの遺作のタイトルでもあります。
 「美しいもの、未知なもの、神秘的なものに(驚き)目を見はる感性」という(上遠恵子さんの)訳を紹介し、現代社会に生きるすべての人がこの言葉を思い出し、自然への畏敬の念を取り戻さなければならないと繰り返しておられます。

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素敵なこちらの言葉を、皆さんに贈りたいと思います。

 未だに収束を見せない今回のパンデミックを通して皆さんも、人類全体に影響を及ぼす地球規模の問題は、これまでの科学技術だけでは、なかなか解決のできないことを体感したのではないでしょうか。
 しかし、過去の歴史を振り返ると、人間は、例えば感染症によって大きく社会構造の変化を強いられた場合でも、柔軟に適応して乗り越えてきました。

 解剖学者の養老孟司先生も、「世の中も将来も、そして自分さえも、絶えず変化し、思い通りにはならないもの。」だから、「今のコロナ禍の状況を受け入れて、自分自身でできることを考えていくのがよい。特別なことが起こるということは必ずしも悪いことではない。これからも人生には、いろいろあるだろうから、その都度あまり頑なにならずに、上手に受け入れていくことが必要なことなのではないか。」「自分が変われば世界も変わる。とにかく勇気を出して、一歩を踏み出していくこと」が大事。「...自然を、その一部である体の感覚で確かめるということを大切にしながら...」とおっしゃっています。

 ここ迄お話してきました環境問題や生命について研鑽を積まれてこられた賢者たちの言葉は、私たちのこれからの生き方への助言や指針に溢れているように思います。
 皆さんには、どうか畏敬の念をもって自然や世界を広く見、驕ることなく謙虚さと共感的な態度で人に向き合い、そして、自分もまた自然の一部であるということを忘れずに、これからの人生を、豊かなものにしていってほしいと思います。

 結びに、保護者の皆さまに一言申し上げます。本日は、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。お子様が人生の大きな節目をまたひとつ、迎えられたことに、喜びも一入のことと拝察いたします。このコロナ禍の中で、お子様の健やかな成長を願い、支えていらした皆様には、さぞかしご苦労も多かったと存じます。ご家族様の深い愛情と絆に、心より敬意を表しますとともに、本日まで、本校の教育活動にお寄せいただきましたご支援とご協力に深く感謝を申し上げ、式辞といたします。

令和四年三月六日(東京会場)・十日(茨城大子校会場)       ルネサンス高等学校 校長 菊池一仁







※昨年度の式辞はこちら☞令和二(2020)年度卒業証書授与式 in 大子 & 校長式辞


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