サイエンスコース
2016.05.13.Fri
昨年の秋、タナゴの一種、カネヒラの受精卵を低温処理して発生を進めたことを前回、報じました。早期に低温処理した受精卵は発生開始のスイッチが早く入ったため、すっかりタナゴらしい体型に成長してきましたが、同時期に生まれた兄弟なのに低温処理を遅めにしたため発生が遅れて、卵嚢に蓄えた栄養を使い尽くし、色素沈着してきた個体も、このまま順調に餌から栄養摂取してくれるものかどうか危ぶまれています。
前回の個体は、メダカ用の粉末の合成飼料を摂餌してくれたので良かったのですが、喰い付き不良な個体もいます。その場合、残した飼料が腐敗して水質が悪化し、それが原因で稚魚を殺してしまう心配があります。そのような場合、喰い付きが良くて、しかも水質悪化を招かないのは生き餌(天然餌料)です。口が大きければ魚が好むのはミジンコやイトミミズですが、稚魚の口のサイズにちょうど合うサイズの餌を用意する必要があります。
水産増養殖の分野で名高いのは、シオミズツボワムシと呼ばれる汽水(淡水と海水の混じり合う河口域)に生息する体長が100~300μmの微小動物です。養殖ウナギを全滅させた犯人が、逆転して稚魚の餌に仕立てられました。海水魚の増養殖分野では、海水に馴化させた2系統(大・小)を稚魚の口のサイズに合わせて使い分けているようです。しかし、淡水用の天然飼料の決定版は聞きません。
そこでスーパーサイエンスコースでは、タナゴ類の人工養殖に適合した天然餌料を探索していくことにしました。サイズ的には、理科室で維持しているゾウリムシ(200~300μm)でも間に合います。与えてみると捕食しました。しかし、栄養価に難があるかも知れません。ミドリムシ(ユーグレナ)の方が健康食品として着目されるため栄養価で優れることでしょうが、大きめの系統を探さない限り理科室で維持しているミドリムシは小型種で、ゾウリムシの半分にも満たないサイズです。
そのようなわけで現地の生息環境から適合した候補を新たに探索するか、もしくは "他人のそら似" でも構わないので、運良く条件を満たして、かつ実験室で容易に維持管理できる餌料生物を開発していく必要性が高まってきました。
なお、私の経験ではワムシは "諸刃の剣" です。以前、ミジンコを採集して運搬する途中で、ワムシが大増殖してキチン質の殻の表面に一斉に付着してミジンコを全滅させられてしまったという失敗があります。その点、ゾウリムシやミドリムシは自由に遊泳するタイプなので餌に魚が襲われてしまうような "下克上" の事故は考えにくいかと思われます。
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画像・左:タナゴらしい体型になってきたカネヒラ未成魚、同・中:浮上した直後の稚魚(矢印)と「初期餌料生物」の専門書、同・右:卵嚢が消失し、色素が沈着してきた稚魚(筆者撮影)
注意:天然記念物であるイタセンパラの飼育や繁殖は、許可を得た研究機関でないと実施できません。日本産タナゴ類の中でカネヒラのみ環境省のレッドリスト(絶滅危惧種)に含まれていません。そのため大阪校の理科室で飼育・維持しています。
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