アート&サイエンスコース
2017.03.19.Sun
先日、淀川の十三干潟でヘドロ電池用の底泥と有機物源として添加するヨシ(Phragmites)の枯葉や立ち枯れした茎を採取してきました。底泥を採取していると、シジミも収穫できてしまいます。淀川下流は感潮河川で、十三干潟の上流に設けられている淀川大堰のまでは海水が遡上してくる汽水域となっています。従って、河口域干潟にはヤマトシジミが生息しています。
漁業権が放棄されているので出荷されず、地元の人以外はあまり知りません。しかし、大阪湾で増殖した麻痺性貝毒を引き起こす有毒プランクトンをろ過捕食して毒素を溜め込んでいると危険なので、大阪府や大阪市の検査機関が安全性を監視しています(主に、春先に毒化が起こりやすい)。淀川は、内水面として水生生物センター(寝屋川市)で細胞密度を定期観測しています。
今回、直近のデータは毒化している心配のないプランクトンの分布状態でした。ちなみに、シジミはこうしてプランクトンを入水管から水を吸い込み、ろ過して捕食するため水の濁りも取り除くことで有名です(→Youtube動画例「藤前干潟浄化実験」※音声再生に注意)。言い換えると、ろ過捕食ですから無差別に水中の懸濁粒子を取り込んでいると考えられます。
調理前には、二枚貝が取り込んた砂泥を吐き出す「砂抜き」の操作が必要です。「泥吐き」実験を一晩、行ってみた後、吐出物を顕微鏡観察してみると、驚くべき結果が得られました。
❏ 吐き出したのは「砂泥」でなくて、何と「細菌」だった!
驚いてネット検索してみると、「しじみには菌は存在するの?」の記事が謎を解くカギを示してくれました。貝類など(軟体動物や節足動物も)の消化管には中腸腺と呼ばれる消化を助ける器官が発達し、消化酵素を分泌して肝臓や脾臓の役割を果たすそうです。どうやら中腸腺に食べた植物プランクトンの消化分解を助けるための細菌を宿し、餌の有機物を加水分解する一方、増殖した余剰分の細菌を吐き出している可能性を感じました。
位相差検鏡した画像を添付しておきますが、概して細胞は大型で、スライドガラス上に沈むやいなやその位置で分裂してマイクロコロニーを形成する様子が観察されました。さながら細菌は、まるで"胃腸薬"の役割を果たしているようで、驚きでした(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。
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画像・左:低温保存庫で蓄養中のシジミ(上の段)、同・中:位相差で観察(対物x20)されたシジミが吐き出した細菌のマイクロコロニー(左上を起点に時計回りに、長い糸状性細菌、紐状に縮みのある細胞、短桿菌、長めの桿菌;※レイマー鏡基に専用G130デジタルカメラで撮影)、同・右:砂出し用の容器の底に溜まった集積物(1回目は黒っぽい、2回目は白っぽい;時期的には早いが、卵や受精卵らしき球状の生体らしい物体が目につく。一方、餌となる珪藻やミジンコなど甲殻類の殻はごく僅かしか見られなかった。
付記:貝類の吐出物中の細菌フローラ(細菌叢)に関する既報論文は見当たらなかったが、水産増殖の国際誌に貝類の分泌する粘出物で形成されるバイオフィルムに関する総説が見つかった。刊行元のエルゼビア社が近年、文献リソースが持つ公共性(クリエィティブ・コモンズ)に鑑み、同社データベースの一部をオープンアクセスとして開放しているので、同社の規定に則りDoI情報を開示する:10.1016/j.aquaculture.2015.04.037
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