温泉由来細菌細胞のイオウ顆粒の役割(2017年10月30日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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温泉由来細菌細胞のイオウ顆粒の役割(2017年10月30日)

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温泉由来細菌細胞のイオウ顆粒の役割(2017年10月30日)

温泉由来細菌細胞のイオウ顆粒の役割(2017年10月30日)

スーパーサイエンスコース担当の竹内です。先日、長野(別所温泉)の天然温泉から採取してきた温泉水中に存在していた糸状性細菌の細胞内に(暗視野で)白く輝いていたイオウ顆粒の"貯蔵物質"としての挙動を確認しましたので、続報としてご紹介します。細菌が環境中の化学エネルギーを細胞内でどのように利用しているのか、イオウ顆粒の消長として浮き彫りとなります(顆粒があればエネルギー蓄積中、顆粒が消失したら消費済み)。

源泉の泉質はイオウ温泉(硫黄泉)で、フルに還元状態の硫化水素イオンが6.6mg/L、部分酸化を受けたチオ硫酸イオンが7.5mg/Lです。完全酸化された硫酸イオンは83.9mg/Lです。この硫化水素-硫酸イオン間の酸化還元電位(oxidation-reduction potential, ORP*1差が、この微生物が硫黄成分の卓越する物質代謝系で生育中にエネルギーを獲得できる原理です。還元状態でエネルギー準位が最も高く(不安定である)、酸化状態で最も低い(安定している)と解釈して構いません。現在の地球型の海洋では、硫黄は酸化された硫酸塩の状態で安定している(原始の海洋では、真逆の状態であっただろうと思われる)。

*1 Redox potential とも呼ぶ。Ehと表示する場合もある。

群馬・草津温泉(白根山)や日光・湯元温泉(湯ノ湖)では、上記の別所温泉と較べて遥かに硫化水素の含有率が高い源泉から温泉が供給されている。そのため肉眼的に泉質は白濁して見えることが多い。一部、硫黄分が黄色く析出(湯畑)し、"湯の花"と称されている。10円玉の銅がピカピカに変わるのは日常、使われて酸化された状態のくすんだ銅が還元されて赤銅(しゃくどう)色に変わるからです。

この硫化水素イオンやチオ硫酸イオンが次々と流れてくることが、糸状性細菌のエネルギー獲得系の持続には必要条件でした。それは天然温泉の"かけ流し"状態であれば、駆動系は保たれます。が、瓶の中に閉じ込められ放置されたら、還元性の物質が持つエネルギーを使い果たし、エネルギー獲得は最早、困難となります。一次電池(使い切り)のように、放電して生命を閉じてしまうからです。

グラム陰性の糸状性の桿菌でイオウ顆粒を蓄積する細菌グループとして筆頭に挙げられるのは、チオスリックス(Thiothlix)様の細菌群です。この細菌は死滅してしまうのでしょうか? それは地球生態系での代謝系の進化の助けもあって、定かではありません。化学物質の酸化から無機的にエネルギーを獲得できる化学合成独立栄養(cheomo-autotrophy)の様式だけでなく、有機物(これも還元性物質の代表)からもエネルギーを獲得できる混合栄養(mixotrophy)の存在も、特に下水環境では知られています*2

微生物は地球環境での先住者として隈なく分布し、不断の物質代謝経路の駆動させている営力として寄与する面では大活躍している生命体だと言えます。この微生物化学分野での先駆者は、オランダのバース・べッキングです。微生物をエネルギー代謝系で分けてpHEhのダイアグラムにプロットするなど、地球微生物学の伝統ではオランダ勢が随一(米国へも移民)なのも頷けます(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

*2 下水など有機物が嫌気的な条件下で分解されると硫化水素が生成し、無機・有機の両方の化学エネルギーを生育に使うのだとシナリオが描けます。加えて生成する有機物は分子量の小さな低級脂肪酸の酢酸であり、溶解性の有機物を利用する糸状性細菌は、障子紙の筒状の鞘(sheath)内で生育します。ただし、好気的ないし微好気的な雰囲気が必要で、下水処理場の生物反応槽(リアクター)の活性汚泥混合液(ML)中で増殖し、汚泥を膨化させるバルキング現象を引き起こすことで知られます。糸状性細菌の多くは、河床部の底泥の表面などを故郷(ホームグランド)とし、ひっそり暮らしていたのです。人間が人工環境(built habitats)という新たなニッチ(生息の場)を作り出したことで、自然界以上に特殊な細菌群が高密度で増えてしまったとも言えます。

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画像・左:採取して間もない2~3日間の経過(左上から時計回り:1日後、2日後、3日後*3の経過、9日後にはエネルギー貯蔵物質のイオウ顆粒が消失)、同・中:9日間経過したスライドガラス固着物の試料をグラム染色した標本(外部からの還元性物質の供給もなく、貯蔵物質のイオウ顆粒も尽きて細胞内が既に溶菌しているため、微弱に染色されていると推測可)、同・右:恒温器内の培養瓶(温泉水内にスライドガラスを没入)。

*3 概ね1日目の庫内気温が30℃、2日目が35℃、3日目が40℃に設定(現地の湯温公称値は、約41℃)。

謝辞:培養液など水分を大量に含む培養試験には、樹脂製の恒温器を用いている。これは、3年生の河脇凌くんがリバネス(サイエンスキャッスル)研究費(5万円に約1万円を自助補填)を獲得したことで調達した物品である。該当する物品の前面には、(株)リバネスのロゴマークを表示して研究支援に対する謝意を表します。

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