アート&サイエンスコース
2017.11.02.Thu
スーパーサイエンスコース担当の竹内です。以前、富田林市を流れる石川(大和川の支流)から糸状珪藻のメロシラの元株を採取し、水槽内に流れを作って室内培養してきました。
メロシラの大量培養は以前(2007年頃)、信州大学・中本信忠教授(現名誉教授)が野外で試みて実証したものの、水生昆虫による食害を受け、野外では難しい事実を目の当たりにしました。緩速ろ過池のような半自然の連続培養系でも湧水や滝壺のような天然条件でも優占しますが、緑藻へと遷移してしまうことがしばしばです。そこで毎回、河川へ採集に行く訳に行かないので、実験室で維持しています。
この規模ではメロシラ以外の珪藻も共存しています。水槽内で流れがあるためメロシラの増殖に有利ではありましたが、昨日、謎だったメロシラ属の生活史*1の一端を覗いた気がしました。増大胞子を形成し始めた兆候が見られたからです。
単細胞生物である珪藻は、二分裂で増殖します。が、細胞壁がガラス質のシリカ(珪酸重合体)で形成されているため、分裂するたびに娘細胞の一群はどんどん小型化して行きます。そのサイズを復帰させる仕掛けが、この増大胞子を作ってフリダシに戻るという「細胞サイズ復元」戦略です。この水槽培養系で一定の回数、分裂し続けたため増大胞子を形成し、更新モードに切り替わったのと推測されます。
まだ本格的な増大胞子形成が始まる手前の状態のようですので、メロシラ(和名タルケイソウ)の生活環*2を把握するため今後の経過を観察して行きます(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。
*1 カナダのブリティシュ・コロンビア大学の植物プランクトンの図鑑サイト、*2 東京学芸大学の真山研究室(珪藻)のサイト
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画像・上段左:水槽で保存培養中のメロシラなど珪藻群集(左)と検鏡中のプレスクールに参加した中学3年生(右)、同・上段中:スライドガラス上に希釈して藻類の懸濁液を滴下していく(左)と対象物が確認できない水滴はティッシュで拭い去る(右)、同・上段右:対象物が確認できた水滴だけを残し、スライドガラスごと培養ビンに落とし込み(腐葉土抽出エキスを少量、添加して)培養中、同・下段左:メロシラの連鎖細胞の一部が休止活動に入り、増大胞子を形成する準備に入った様子(位相差・対物x20の明視野)、同・下段右:同じ被写体を位相差板を操作(対物x20のまま、位相差板をx100用に切り替えて暗視野化)して検鏡(正規の使用方法ではありませんが、レリーフ状に像が結ばれる)
付記:来春、スーパーサイエンスコースで通学することを予定されている中学3年生の女子生徒が今回、理科室へ実技指導を希望して来られました。大阪校のプレスクール行事の一貫です(個別対応)。メロシラ珪藻に興味を持っていたので、微細藻類の純粋分離の手法(ピペット洗浄法の原理を中高生でも理解できるように簡略化*3)を伝授しました。今回は、時期的に増大胞子を形成し始めた材料でしたので、メロシラの生活環を把握する方向性を狙っていくことになるかも知れません。増大胞子の問題は固いシリカ質の殻を持つ珪藻を扱う上で、どうしても避けられない道ですので、取り組むチャンスだと考えています(竹内記)。
*3 ここで用いている技法は、大阪校で独自に開発した微小動物の分離手法です。微細藻類だけでなく原生動物やワムシ、センチュウにも適用可能です(羽状目珪藻での成功例)。元々は、私自身が中学時代に読んだワシリコフ著『微生物界の探検』(1962年)に書かれていた記述をヒントにしています。また、珪藻の培養に腐葉土抽出エキスを使って成功したのは、私が大学学部時代に日光・湯ノ湖の湖水で偶然と成功した経験にまで遡れます。寒天培地上に珪藻のコロニーを形成させることができました。
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