アート&サイエンスコース
2016.06.01.Wed
電気がご専門の府立高校(現、今宮工科高校)の三浦靖弘先生から、私のブログ記事で大阪校理科室でアセラス(和名ミズムシ)を飼育していることを知り、実験材料としての分与を依頼されました。スーパーサイエンスコースの河脇凌くんが面倒をみてくれていましたが、世代交代の速度が速く近親交配が進んで遺伝的な劣化は始まったのか、1年も経たず集団が衰退して行きました。
そこで今回は、雨上がりに野外の水路で上流からの異地性の個体群が適度に混じったと思われるアセラス集団を落ち葉ごと昨日、採取してきました。今回、3つのグループに分けて維持し、劣化の兆候が見られたら相互に交配してみて個体群の衰退を阻止していくように試みます。
三浦先生とは、大阪府高校生物教育研究会の会員(教員)研究発表会の席上で昨年1月、出会いました。昔の職場(藤井寺工科)で生物部を組織して生徒に「探究学習」を指導してきました。京大の院生が追試しても遜色ないデータを和気あいあいと叩き出す工科高生の活動を目の当たりにしました。
河川整備基金を用いて三浦先生率いるチームの研究成果が平成24年度及び同26年度の報告書2つにまとめられています。三浦先生が次のステップとして白羽の矢を立てたのが、「モデル生物」としてのアセラスです。そこで今、私から分与する準備をしています(試験研究機関から毒性評価用のアセラスを調達されるルートも検討されるそうです)。
「探究学習」を通じた「発見」は、何か実行すれば必ず何か得られます。今回も偶然、「生物膜」の見本を発見をしました。「そんなモン、誰かが既に発見しているだろう。」と思われますが、プロの研究者は意外にも「寄り道」が許されないのです。だから高校レベルの「探究課題」は空前のエアポケット状態のまま誰かに発見されることを待ち望まれています。言わば"宝の山"と呼べるでしょう。
「探究学習」は、正解のない問いを重視する文科省の掲げる「新しい学力観」に沿った学びです。大学改革はその方向へ動き、小学校へも飛び火しています。中学(一貫校)入試へのためです。高校の教育課程も「暗記学習」から「リベラルアーツ」へシフトする方向性は不可避でしょう。
最後に紹介したいのは、雨のあとアセラスを採集したためか、落ち葉を水洗いしていると白いモヤモヤが沢山、沈殿してくることに気づきました。もしやと思い顕微鏡で観察すると「バイオフィルム(生物膜)」です。案の定、ほぼ同一の菌体(細菌細胞)でした。グラム染色性は陰性ですが、染色性は不良でした。細胞の周辺に粘着物を生産するのだと思います。墨汁染色で細胞が粘液層に包まれていることが確認できました。バイオフィルムが均質に形成されていたことから、パイプの内壁のような場所で形成されたものが雨で剥離し、流下してきたものと推定されます。細胞に粘着性があるからこそ固形物の表面で膜状に増殖できた・・とのラフ・スケッチが描けるのです。
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画像・左:採集場所(京都府、JR「山崎」駅近くの天王山登山口)、同・中:沈水した落葉(餌)をソーティング中、同・右:流下したバイオフィルム(A:目視、B:位相差x100、C:ネガティブ染色x200、D:グラム染色x1000油浸)
※ネガティブ染色とは、墨汁など黒い粒子の顔料を混ぜて検鏡する操作で、透明な粘液層を可視化させる手法。英語では、"india ink stain" とも呼ばれる手軽で便利な微生物学のテクニックです。
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を置く広域通信制高校です。
どんなタイプの方でも、安心して学習し卒業できるシステムを構築し、生徒一人ひとりのライフスタイルに合った"学び"を提供しております。
「登校してしっかり学ぶ」「友達を作って学校生活を楽しむ」という学校が多い中、最短年4日の登校で高卒資格が取れる学校は多くはありません。
一方で本当に高卒資格が取りたくても、仕事が忙しくて登校できない、子育てで手が離せないなど様々な事情で、学校に行きたくても行けない方がたくさん居るのも事実です。
ルネサンス高校はそういった方のニーズに答えるために生徒に負担のかからない授業やレポートシステムを作り、14年経ちました。卒業生も約15,000名となります。
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