アート&サイエンスコース
2017.01.29.Sun
教育デザイン室長の竹内です。今日はスーパーサイエンスコースで採用している「探究学習」がもつ学びの特性について補足しておきます。科学だけ学んでいるように、誤解を受けかねないからです。
中核とするテーマが科学で、実験や観察をツールにしているのは事実です。しかし、その先で派生する場面があれば、いかようにも脱線して行きます。それで高校教育が成り立つのか・・という不安を感じるのは分かります。しかし、体系的に(=網羅的に)知識を積み上げるより、出たトコ勝負で情報に触れる方が知的な鍛錬となり、定着率も高く、次への足掛かりになることは間違いありません。無論、入試に特化し対策したグループとガチで対戦したら負けるのは確かでしょう。が、とかく試験勉強は終わった途端、リセットされてしまうものです。私たちが実践している学びこそが、これから主流になるべき「21世紀型」の学びにいち早く肉迫していると自負しております。
先日、ラボで生徒らとディスカッション中に恰好な例を経験しましたので、具体例としてご紹介しておきましょう。(教員ではなく)共同研究者としての私がどのようにして生徒の探究心に火を灯そうとしているのか、知っておいて下さい。ネタは、岩田祐樹くんの「淀川ヘドロ電池」の実験です。
当初、テスター(デジタル・マルチーメータ)で端子電圧を測定した値を起電力(教科書的には、必ずしも間違いでない)としてまとめ一旦、学会で発表しました。しかし、試験購入した米国製の実験キット(MudWatt)は高価でしたが半額になり、大阪校は4機を備えることができました。そこで、同キットの考案者が推奨する起電力の測定方法に忠実に従ってみる方向へ舵を切ったのです。
この基盤の秘密(恐らく特許)は、同社サイトのFAQコーナで一人の高校生(Brodie)が質問していたので、考案者(Kevin)からの回答がカラクリを知るヒントになりました。"BlinkerBoard"は、マイクロチップとコンデンサ、LEDランプが一体化してあり、微生物電池(MFCs)から生じた電流がコンデンサに一定量(閾値)だけ蓄積するとLEDが点滅する仕掛けでした。その点滅をスマホで動画記録すれば結果をグラフ化するアプリまで無償で提供されていました。私は、生徒たちに水道の蛇口から細く絞った水を紙コップに貯めるモデルで説明しました。私が提案した「紙コップモデル」では、不十分と自覚していました。コップの中を空にする仕組みを欠くからです。ここで使ったモデルを例にして説明する手法は抽象化作業の一つであり、高等教育には欠かせない思考訓練の一つです。
私の提案したモデルに対し、改良を加えてくれたのが、当事者の岩田くんです。日本庭園で見る「ししおどし」を例に出し、一定量が溜まった水を自動的に排出するカラクリを使った実例を岩田くんは思いついてくれました。お見事としか、言いようがありません。その調子です。どうもありがとう。
次に私たちが進める作業は、気づきの妥当性をMudWattで起業したKevinへ伝える行動です。ここまで到達して、ようやく私たちはKevinらがMudWattのキットを開発した道程を追い駆けてきたという実感がしてきました。でも、実際の英文づくりは難航を極めました。そこで事前にネイティブに英文を見て貰うことにしたのです。相手はアメリカ人で、名古屋市の私大に昨年から勤務するペドロ(元ハワイ大学マウイ校)です。以下、岩田くんがPedroから受けた助言です:
Iwata-kun,
I hope you are doing well. It is very nice to meet one of Takeuchi sensei's students. I hope to meet you soon.
Below follow a few suggestions for the pdf you sent me.
Best regards,
Pedro
(1) Please mention your name somewhere.
(2) Say: I am a high school student in Japan ..... NOT I am a Japanese high school student, because you can be Japanese and be studying abroad! (^o^)
(3) Now I can imagine
(4) I would like to use a Japanese device called "Shishi-odoshi" as an example.
(5) which is comparable to the mechanical noise the Shishi-odoshi makes when it (here you fill in how the noise is produced)________________ . (For example: ...when the bamboo pipe hits the bowl; ..... when the bamboo pipe empties itself; ....)
Hi (1) I am a Japanese highschool student (2) currently doing a research project using MudWatt. I had the same question as Brodie L. previously made. At first I have simply measured voltage using a digital multimeter at the end of both wires, as I didn't understand the importance of the BlinkerBoard.
Now I understand how it works. Then (3) I can imagine SHISHI-ODOSHI (See Wikipedia), or SOZU, as a model of the BlinkerBoard (See the relevant Gif animation).
When describing how the Board works, (4) I would like to take a Japanese device, SHISHI-ODOSHI, an example. In this analogy, electrical current is represented by the water flow, a capacitor is represented by a bamboo pipe. As a result, we can measure electric power generated from the MudWatt by monitoring an interval of the LED blinking, (5) which is analogous to the resultant noise mechanically made by the SHISHI-ODOSHI. Am I right?
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画像・左:「ヘドロ電池」実験中のMudWatt装置(矢印がコンデンサを示す)、同・中:LED点灯により発電通知(岩田くんが指さすLEDランプが点灯する)、同・右:「ししおどし」モデルの概念図
追記:「ししおどし」の自動排水機構は、雨量計にも応用されていました。それもアメダスの自動計測システムです。このサイトの末尾にさり気なく記されていました。私は内容を理解するのに、少し時間を要しました。頭いい人たちって、いるものですね。参りました。生徒諸君よ、まだ発明・発見のチャンスはある。是非とも、頑張ってくれたまえ。
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ルネサンス高等学校グループは、全国に3校(茨城、愛知、
大阪)、連携キャンパス及び受付・相談センター(東京・新宿代々木、神奈川・横浜、愛知・豊田、名古屋、大阪・梅田、広島、福岡)
を置く広域通信制高校です。
どんなタイプの方でも、安心して学習し卒業できるシステムを構築し、生徒一人ひとりのライフスタイルに合った"学び"を提供しております。
「登校してしっかり学ぶ」「友達を作って学校生活を楽しむ」という学校が多い中、最短年4日の登校で高卒資格が取れる学校は多くはありません。
一方で本当に高卒資格が取りたくても、仕事が忙しくて登校できない、子育てで手が離せないなど様々な事情で、学校に行きたくても行けない方がたくさん居るのも事実です。
ルネサンス高校はそういった方のニーズに答えるために生徒に負担のかからない授業やレポートシステムを作り、14年経ちました。卒業生も約15,000名となります。
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