サイエンスコース
2018.03.15.Thu
教育デザイン室長の竹内です。間もなく3年生になる生徒2人に、内緒にしてきた秘密を今日、披露しました。この2人は、スーパーサイエンスコースが軌道に載る前、過渡的に迎え入れた生徒です。実は2人とも純粋の理系とは言えません。それでも、私がアート系の生徒たちを支援したくなる理由が、私自身、"ニセ原始人"ならぬ"ニセ理系人"だからなのかも知れません(理学の博士号は取得しているのですが・・)。
これは生活圏が狭いうちは当然かも知れませんが、私は小学校の頃まではマンガ家志望でした。ケント紙に製図用インクを"つけペン"(かぶらペン、Gペン、丸ペン、スクールペン、ガラスペンなど)で描く本格派でした。それと言うのも小学校高学年の頃、石森章太郎氏の『マンガ家入門』(1965年、秋田書店)を入手していたからです。続編を併せ、空前絶後のプロがプロのタマゴを意識して、後進を育てることを念頭に執筆した本格的な入門書*1だったからです。多感な少年時代に、著者の熱い意気込みを受け取らなかったはずがありません。
*1 作品の売り込みの仕方や、同好の士を見つけられるように巻末に現役マンガ家の自宅住所やファンレターを出した差出人の自宅住所まで公開し、交流させることを意図していました。後に、私が自分の成果を売り込む活動をしたり、メンターを見つける習性を培ってくれた気がしています。要するに、正規の学校教育課程の中ではゴッソリ抜けていた「生き方(道の拓き方)」を教えてくれた人生の指南書でした。
実際、私自身の小学校時代は、眉間を濡れ手ぬぐいで冷やすほど視神経を酷使して細密な絵を描き続けました。今でも小学校時代の友人と会うと私がその道へ進んでいないことにガッカリされてしまうほど・・でした。が、マンガ家も科学など知識が豊富でないと良い作品を生み出せないと観念し、中学へ上がってからは科学を勉強しなくてはと思い、戦後の理科振興のために作られた科学教育センター活動に加わり、研究生となりました。すると、科学の道が面白く、マンガの世界へ戻る道をスッカリと忘れてしまったのです。
しかし、不思議なモノで扱う対象はマンガから科学へ変わろうとも、私の心の奥底で石森章太郎氏の放ったマインドが息づいてきた(恐らくは今も)ことを感じています。都庁職員の時代には新入職員のために研究活動に入る時の心得えを記したテキストを書き残し、自分自身が書いてきた一連の原稿を原著論文、短報、総説、解説、連載などタイプ別に並べ、それに著者の立場から解説書や実験書*2を書き遺したのです。
*2 当時の新人研修の成果が、『エアレーションタンクの微生物ー検鏡と培養の手引ー』(日本下水道協会)となって結実した。この第4章は、書き下ろしで後に、日本の公定法の『下水試験方法』(1997年版)に採択されている。私の後輩の研修生の一人が最新版(2012年版)の改訂に尽力してくれていたみたいで嬉しい。
我ながら、呆れました。それはマンガと論文の違いはあれども、石森章太郎氏の指南書の方法をそのまま受け継いだものだったからです。全く無意識でしたけれど、著者の情熱は私の中に根づいていたのです。私はたとえ論文やポスターを制作しても、それはマンガの代わりに科学を扱っていたのかも知れません。
昔の生物学では、やたらと観察してスケッチする場面が多く「生物学科は美術教室なのか?」と疑うほどでした。昔は論文に挿入するグラフや地図も、製図用ロットリングやスクリーントーンで模様を入れる手作業が多く、ホントにマンガを描く代償行為そのものでした(今は、ソフトウェアで代行しています)。
古い図書ですが、今日、2人の生徒に正・続を別々に貸し出し、1人は絵本作家を想定し、もう1人は映像作家(写真撮影、動画編集)を想定し、石森章太郎氏の創作マインドを受け取って貰いたく持ち帰って貰うことにしました。私の願いは、2人に数ページで構わないからオリジナルの絵本や写真集の構想を練り、可能なら作品を仕上げ、ポートフォリオを作って貰うことを3年次の目標にして貰いたいのです。
科学の道へ入ってしまった私ですが、私を育ててくれた原点となる書物は紛れもなく、この2冊でした。当時、受け取った創作意欲*3が今なお、私に息づいております(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。
*3 国立高専の職を辞して下野するに際し、私は一つの教育論文「国際競争力を育む教育方策への展望」を紀要(呉工業高等専門学校研究報告)に書き残してきました。広島大学が管理運営している共同リポジトリ "HARP" から原稿の閲覧、ダウンロード(無償)できます(閲覧回数:8,500回、ダウンロード件数:300回)。
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画像・左:故・石ノ森章太郎(1938ー1998)のマンガ家入門(1965年)及び続・マンガ家入門(1966年)、同・中:まるで純文学のような知られざる名作『龍神沼』と作品の構想段階からの秘密を公開、同・右:作品の登場人物のキャラクター・デザインやストーリー展開(シノプシス)の構想段階のラフ・スケッチ
付記:私自身が人生の選択に当り、いつも『マンガ家入門』で受け取ったマインドを使ってきたような気がしています。それは今も、スーパーサイエンスコースの教育デザインをしていく時にも同じだと感じます。それどころか、今を生きている人生そのものが時に、まるでマンガの中で起こっている展開に感じられることもあります。その意味で私はマンガを描く必要はなくなり、マンガのような人生を送れば、それで満足です(竹内記)。
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どんなタイプの方でも、安心して学習し卒業できるシステムを構築し、生徒一人ひとりのライフスタイルに合った"学び"を提供しております。
「登校してしっかり学ぶ」「友達を作って学校生活を楽しむ」という学校が多い中、最短年4日の登校で高卒資格が取れる学校は多くはありません。
一方で本当に高卒資格が取りたくても、仕事が忙しくて登校できない、子育てで手が離せないなど様々な事情で、学校に行きたくても行けない方がたくさん居るのも事実です。
ルネサンス高校はそういった方のニーズに答えるために生徒に負担のかからない授業やレポートシステムを作り、今年で12年。卒業生も1万人を超えております。
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