「キモカワ巻貝」による寄生虫学入門(2018年08月16日) | 通信制高校のルネサンス高等学校

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「キモカワ巻貝」による寄生虫学入門(2018年08月16日)

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「キモカワ巻貝」による寄生虫学入門(2018年08月16日)

「キモカワ巻貝」による寄生虫学入門(2018年08月16日)

スーパーサイエンスコース主担当の竹内です。「寄生虫」って言葉を聞いただけでキモい・・って印象ですよね。しかし、東京・目黒の『寄生虫館』が今では、デートスポットなんだそうなのだ。

当コースも巻貝からでる寄生虫のセルカリア(第一中間宿主から放出される遊泳体のステージ名)とは偶然のことから未知との遭遇となったのです。いわば、全くのド素人が寄生虫学の魔界へ踏み込んでしまった訳です。・・とは言うものの、新しい生物学の世界が拓けたので高校生諸君を魔界へ誘い込むことにしました(採否は分かりませんが、地元の研究誌の記念号に寄せる方針です)。

(1)生物材料 カワザンショウガイは、なんてったって微小貝(殻高も5mm程度)。指先で砂粒を掴む感じで、巻貝を採取している感覚はない。肉眼で顔を拝むのはシンドいものの、実体顕微鏡を使えば、なんともまぁ、可愛らしい風貌(画像参照)。少しはキモい感が漂うものの、直ぐ見た目の滑稽さに打ち消されます。だから「キモカワ」なヤツ。特に、汽水域で見つかる巻貝は、カワザンショウガイとイシマキガイが双璧です。後者は水槽のコケ取り名人としても有名。

(2)エサ不要 絶食させても、容器を移すと直ぐ脱糞します。何を食っていたんだろう? との疑問から、食糞するのだと理解しました(糞を放置しておくと細菌が増え、窒素成分が増すことで栄養価が高まるというのが定説)。この食性が、寄生虫に感染した鳥や哺乳類の糞の中の卵を巻貝が取り込む一因であり、まさに蒔かれた寄生虫の卵を回収するスカベンジャー役を食糞する巻貝が担っていると言うストーリー展開です。特に、小さな貝ほど摂食によるエネルギー補充が死活問題でしょうから。

(3)誘引素材 ライフサイクルと環境条件によって、自然とセルカリアが放出されることもアリ得るが、次の第二中間宿主となり得る魚類の他、甲殻類(特に、個体数の多いカニ)は水鳥にも捕食されやすいため、寄生虫が次のステージへ駒を進めるには最適な後継者候補です。市販のシラス干しや殻付きの小エビを添加すると、セルカリアの放出が促進されます(感染はしていても、セルカリアが放出されるとは限らないので・・)。

(4)寄生部位 貝類には消化器系の器官として中腸腺(消化盲嚢)があり、栄養が豊富な反面、毒物も集積する臓器であると言われている。巻貝の場合、殻の先端の部位が相当する。奇妙な一致であるが、汽水産巻貝の貝殻はこの部位が欠損していることが多い。河川中のカルシウム分が少ないため溶けてしまうという説明がされるが、明らかに何か外部から穿孔された傷跡も目立ち(生物学的な汚損か*1)、溶解説だけでは十分に説明できない。

*1 以前も指摘したが、野生の巻貝の貝殻の表面がなぜ汚損しているのか不可解である。日本は特に、一つの説が流布してしまうと、「右へ倣え」で定説化してしまいがちな傾向が強いと思われる(西洋哲学では、各思想家が思い思いの説=アルケーを唱えたので、科学が生まれる土壌となった)。

(5)観察要領 セルカリアの放出を観察するには、定量的には1個体ずつ別々の容器に分けて実体顕微鏡を用いて根気よく観察する必要がある。しかし、定性的に判定するには、例えば10個体ずつまとめて容器に入れ、そのグループの中からセルカリアの放出があるか否かを判定しておいて、どの個体から放出されたのかを見極めていく2段階判定の方がセルカリア放出の有無を知るには効率的である。それでも放出されないグループには、誘引素材(小エビ、魚肉など)を添加して応答を見る。

セルカリアの放出実験であれば、実体顕微鏡を備えた程度の設備で研究を進めていくことができる。セルカリアのステージは運動器官として尾を持ち、食らいつくための吻を持つ。いわば精子と同様、取り憑く相手(第二中間宿主;通常はカニや魚類)に乗り移り、最終宿主である鳥類や哺乳類に食べられてフリダシに戻れるよう精一杯、暴れるように跳ね回り運動をする。従って、セルカリア・ステージが最も観察に適している。その属性こそ、寄生虫の素人だった我々の目に触れた原因であった。それにしても、寄生生活を成立させるカラクリは生物学的に興味深い。

例えば、前回のフィールドワークで巻貝が普段、生息している場所(ゴロタ石や藻屑)からカニの巣穴に一斉に移動していたカラクリは、寄生虫にとっては都合良い行動でしょうが、巻貝にとっては何のメリットもありません。寄生虫はどうやって宿主を都合よく操作するのでしょうか? これは"寄生虫の世界"に共通している謎です(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。

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画像・上段左:巻貝としては「キモカワ」キャラのカワザンショウガイ(お互いの貝殻の汚損物をハフハフしながらお掃除に余念がありません)、同・上段中:セルカリアの放出を観察中の丹治遥さん(ハルトくん)、同・上段右:シャーレに10個体ずつ入れ、迅速スクリーニング中(カワザンショウガイは、潮間帯上部に生息するのでシャーレのフタの内側に這い跡が残る)、同・下段左:自然状態のままでセルカリアの泳ぎ出しが見られない場合は、小エビ・シラス干しを添加して誘い出してみる、同・下段右二生吸虫のセルカリア(尾を丸め、吻を突き出し第二中間宿主を求めてボウフラのような激しい泳ぎ方をする;動画参照)

付記:実験材料を採取した際、稚ガニの巣穴付近に待ち構えるように巻貝が分布していたのをみて今回、セルカリアを無理やり誘引しなくても泳ぎ出してくるような予感がしていました。実際、観察してみると、大半の個体で何も誘引しなくてもセルカリアが泳ぎ出しました。季節的にセルカリアが放出されやすい時期だったのだと思われます。カワザンショウガイは、その気になれば汽水域で見つけやすく、食糞するためか寄生虫の感染率*2が高いようでセルカリアの観察には最適な生物教材だと言えます(竹内記)。

*2 巻貝が寄生虫に感染していること(感染率)と、実際にセルカリアを放出すること(放出率)とは同義ではない。正しい感染率は、貝を解剖して中腸腺などの感染部位を摘出し、寄生虫がいることを直接、確認することが必要です。が、専門的な技量が必要となるのでセルカリア放出の確認をもって寄生虫に感染していると判断した(推定試験)。

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