アート&サイエンスコース
2020.02.26.Wed
アート&サイエンスコース担当の竹内です。昨年夏、理科室のグッピー水槽に足音もなくヒタヒタと近づいて来た寄生虫のギロダクチルス・・これは、かつてアトランティック・サーモンを脅かした恐ろしい「殺し屋」*1です。大きな鎌を掲げた「死神」にソックリな点は現在、流行中の新型コロナウイルスとも何か一脈通じます。
*1 寄生虫には、中間宿主を介し種間を転々と移動して生態系の中を循環する内部寄生する寄生虫(internal parasites)と、宿主の表面に取りつく外部寄生する寄生虫(external parasites)と、に大きく2分される。
近年、後者の致死型の寄生生物も宿主の自然選択(natural selection)に貢献しているとする見解が表明されている(Zueva, K.J., et al., Genomic signatures of parasite-driven natural selection in north European Atlantic salmon (Salmo salar), Marine Genomics 39: 26-38, 2018)。自然界の妙味だとも言えしょう。
金魚の尾ヒレに付着したギロダクチルスを発見していた府立高校の先生から検体を貰って来たので、新規購入したグッピーを同じ水槽で接触感染が起こるか否か確かめてみました。すると、接触開始して5、6時間程度でグッピーは死滅したので、その遺体を顕微鏡観察してみると多数のギロダクチルスが付着していました(偶発的な接触感染; accidental transfer)。金魚は生きていましたから、グッピーに対する寄生性の方が卓越していたことが解ります;グッピーの方が金魚よりこの寄生虫に対して感受性が高い*2と表現でき、どの寄生生物(ファージを含む)がどの宿主に寄生するかの関係性を調べる検査法を称して、タイピング(typing)と呼びます。
*2 それまでの知見(文献、2002)によれば、寄生虫ギロダクチルスは形態の多様性の乏しさに反し、寄生する/されるの関係に特異性があると言われていたので、金魚の寄生虫がグッピーに簡単に感染したのには驚いた(致死作用はグッピーに対する方が遥かに激烈で、グッピーとの親和性が非常に高いと言える)。日本魚病学会誌に、海外からの論文投稿もあります(種間感染例の報告など)。
今回、金魚の寄生虫がグッピーにも感染した事実をもって、これにて「ギロダクチルスーグッピー」という一つの実験系を手に入れた実感があります。寄生虫・ギロダクチルスをどのように系統保存したら良いのかは定かでありませんが、グッピーの稚魚は大量に生まれるので逐次、感染させて継代する方法と何らかのカタチ(例えば、扁形動物なので嚢胞または卵嚢を備長炭など間隙の多い素材を用いて)で休眠状態にさせて保存する手法の開発が、次の課題となります(文責:教育デザイン室長・竹内 準一)。
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画像・上段左:新しく再スタートさせたグッピー水槽、同・上段中:新しい水槽で早くも犠牲者が(検鏡した結果、ギロダクチルスが見つかった)、同・上段右:金魚からグッピーへギロダクチルスが容易に感染することが実証された(5時間程度と短い接触時間で)、同・下段左:感染して死んだグッピー個体、同・下段右:尾ヒレにはギロダクチルスが付着(嵌め込み写真は、実体顕微鏡で✕10拡大;同じく動画)
付記:千葉県の養殖業者の知人によると、池上げした魚を出荷前に数日間、薬浴して寄生虫を駆除するそうです。しかし、除虫し切れなかった時には一緒に流出するので、小売店側でも入荷後に監視しておく必要があります。トリートメント方法は業者によるが、薬用粘土系の薬剤(リフィッシュ)、合成色素系の消毒剤(メチレンブルー)、塩化ナトリウムによる処理を行うそうです。
我々は昨年、ラン藻スピルリナが持つ青い色素、フィコシアニンに駆虫効果があることを見い出し、魚体に悪影響を及ぼさないことから危急時のギロダクチルス感染症の対策になることを提案した。今回、新しく再スタートした水槽に市場から入手したグッピーをオス/メス5ペア、ナマズの仲間の底魚・アルビノ・コリドラスを2匹、水草アナカリス(オオカナダモ)を3株を投入した。グッピーの稚魚の隠れ場所の確保のため以前、使った備長炭を①塩素消毒し、②自然乾燥させ、③160℃1時間乾熱滅菌して、投入した。しかし、今回、新しい水槽でもギロダクチルスが発生したことにより、2つの侵入ルートが予想された:1)市販の観賞魚や水草からの持ち込み、2)再利用した敷砂や備長炭などに付着していたギロダクチルスの休眠体(未確認)から再発生してしまった可能性である(入念に消毒・殺菌を繰り返したので考えにくいのだが・・)。
しかし、新しい水槽から発生した死滅個体は3個体に過ぎず、全遺骸にはギロダクチルスが付着していたので、遺骸取り出し作業に伴い寄生虫も一緒に取り除いた可能性が高い。従前、観賞魚の生産・販売者だけでなく、末端消費者である飼育者も死滅個体と一緒に寄生虫も廃棄されてきたことで遺骸に付着していたギロダクチルスの存在が余り世間に知られずに「闇から闇へと葬られてきた」のであろう(竹内記)。
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「登校してしっかり学ぶ」「友達を作って学校生活を楽しむ」という学校が多い中、最短年4日の登校で高卒資格が取れる学校は多くはありません。
一方で本当に高卒資格が取りたくても、仕事が忙しくて登校できない、子育てで手が離せないなど様々な事情で、学校に行きたくても行けない方がたくさん居るのも事実です。
ルネサンス高校はそういった方のニーズに答えるために生徒に負担のかからない授業やレポートシステムを作り、14年経ちました。卒業生も約15,000名となります。
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