通信制高校とは
公開日:2021.10.14
最終更新日:2023.09.27
通信制高校とは?
通信制高校とは、年に約4~20日の登校と自宅学習を併用し、柔軟な形式で学べる高校です。インターネットや郵便を用いて学習資料やレポートのやり取りを行い、自宅などで学習を進めることができます。公立・私立の選択肢があり、卒業後には通常の全日制高校と同等の高等学校卒業資格が得られます。
通信制高校は、文部科学省の認可を受けた学校で、校舎の面積や施設の設置など基準を満たしている必要があります。他に校長、教頭、教員や事務職員の配置が求められ、生徒の受け入れ定員は原則240人以上となっています。
通信制高校は、一般的に3年間のカリキュラムで卒業をめざします。また、通信制高校は単位制を採用しているため、転入学・編入学時に以前の学校で修得した単位を引き継ぐことができます。
単位制とは?
全日制高校では学年制を採用しています。これは1年ごとに一定の出席日数や成績を達成する必要があり、基準を満たさない場合は留年となります。
一方で、単位制は卒業までに必要な単位数を修得すれば良く、例えば1年生の時に単位不足があっても、2・3年生の間で取り戻すことができます。具体的には、必履修科目を含む合計74単位以上を修得することが求められます。
広域通信制高校、狭域通信制高校とは?
通信制高校には「広域通信制高校」「狭域通信制高校」の2種類があります。
広域と狭域の違いを知ることで、住んでいる都道府県を基準に、志望する通信制高校への入学が可能かどうかを判断できます。
広域通信制高校
「本校所在地(学校所在地)の都道府県+2都道府県以上」の地域に在住している方が入学できる学校です。私立の中には、全国から受け入れている学校もあります。
狭域通信制高校
「本校所在地(学校所在地)の都道府県+隣接する1都道府県」の地域に在住している方が入学できる学校です。
上記の通り、通信制高校の中には居住地域の条件を設定されている学校があります。特に公立の場合は、特定の地域に限定し入学者を受け付けているケースが多くみられます。私立の場合でも、本校所在地や近隣の都道府県のみを対象とするケースもあるので、あらかじめ希望する高校に居住地域の制限がないか確認しておきましょう。
卒業するための要件
高校卒業には、高等学校に通算3年以上在籍すること、必修科目を含めて74単位以上を取得することが必要です。通信制高校では、毎日の登校に代わり「レポート(課題提出)」「スクーリング(面接指導)」「テスト(単位認定試験)」等を通して単位を取得します。
高卒資格と高認(旧大学入学資格検定)の違い
「高卒資格(高等学校卒業資格)とは、その名の通り高校を卒業したことを示す資格です。一方で、「高認」は「高等学校卒業程度認定試験」の略で、高校卒業に相当する学力を証明する資格であり、高校を卒業したことを示す資格ではありません。
高卒資格は高校での学業を終えたことを示すのに対し、高認は高校卒業と同等の学力を備えていることを証明します。この点が大きな違いです。どちらも大学進学時の受験資格として認められていますが、高認を取得しても、その時点での最終学歴は中学校卒業となります。
通信制高校に通う人はどんな人?
通信制高校には、さまざまな人が通っています。いくつかの例をご紹介します。
- 全日制高校がフィットしなかった人:学校に通うことが難しく登校日数が足りなかった人や退学してしまった人、適切な環境が整わなかったりした人が、通信制高校を選んでいます。
- 働きながら学びたい人:仕事と学業の両立を図りたい人が通信制高校を利用し、自分のペースで学んでいます。
- 特定の夢や目標に向かって努力する人:美容や芸能、eスポーツなど、特定の夢や目標に向かって頑張る人が、柔軟な学習環境を求めて通信制高校に通っています。
- 留年を避けるために転入学する人:元の高校で留年の可能性がある場合に、3年間で卒業したいと考える人が転入学を選択し学んでいます。
- 登校は難しいが卒業をめざしたい人:引っ越しなどで在籍している学校へ通うことが難しくなった人が、通信制高校を選び自宅で学ぶことで、高校卒業をめざしています。
通信制高校は、個々のニーズや状況に合わせて柔軟な学びを提供し、さまざまな人の学びの場として活用されています。コロナ禍以降、リモート学習が普及したため新入学生も増加傾向にあります。
通信制高校の入試は難しい?
通信制高校の入試は、一般的に難しいものではありません。
多くの通信制高校では書類審査・面接を実施します。中には学力試験(ペーパーテスト)を実施する高校もあります。
重要なのは、自分が志望する高校で学びたいという気持ちを持つことです。
一部の高校で学科試験がある
都立の通信制高校など一部では、60分前後の学科試験を行う場合もありますが、全体の1~2割程度と少数派です。
通信制高校は、個々の学習スタイルや状況に合わせて柔軟に対応することが多いため、学力だけでなく、志望校への熱意や目標を確認しています。
通信制高校の入試の種類
入試の種類は「学科試験(学力検査)」「面接」「作文」「書類審査」の4種類に分けられます。それぞれの仕組みについてご紹介します。
学科試験(学力検査)
学科試験(学力検査)は、国語・数学・英語などの問題に挑む試験です。通常、試験時間は45分から70分程度となりますが、一次募集と二次募集では試験時間が異なることがあります。試験内容は中学生の学習範囲に基づいて出題されるケースが多いです。
面接
面接は通常、5分から20分程度の短い時間で行われます。志望する高校を選んだ理由や入学後の抱負、中学時代の頑張りや得意科目、週末の過ごし方などについて尋ねられます。
作文
作文は出願時に提出する場合と、試験会場で書く場合があります。どちらも指定されたテーマについて、原稿用紙1~2枚程度の文章を書く形式です。多くの場合、テーマは自分自身の考えや意見を述べるものとなっています。面接と同じく、志望動機や将来の目標などを事前に整理しておくことが望ましいです。
書類審査
書類審査は出願時に提出する書類を審査します。通常、提出された調査書や学籍・成績(単位修得)証明書、志望理由書などが審査の対象です。書類審査で不合格になるケースはほぼありませんから、必要な書類を正しく用意し、提出期限を守ることが重要です。
通信制高校へ新入学・転入学(転校)・編入学はできる?
通信制高校は、新入学はもちろん、全日制高校や定時制高校から通信制高校への転入学や、過去に退学した人の編入学も受け付けています。また、学年問わず1年生から3年生まで転入学が行えます。尚、学校によっては、毎月入学を受け入れているところもありますし、4月や10月など年に数回、特定の時期に受け入れている学校もあります。
転入学・編入学は、高校の在籍状況によって異なるため注意が必要です。例えば不登校や留年から高校の変更を検討している方でも、高校に在籍した状態の場合は「転入学」が可能です。高校を退学した場合は「編入学」が可能です。
入学が可能な例
以下に挙げる例のいずれも通信制高校への入学が可能です。
- 中学校を卒業後、しばらくの間どの高校にも通っていない状態から、高校1年生として通信制高校に入学する。
- 全日制高校に入学し、数日後から登校せずに数ヶ月が経過する。その後、退学はせずに同年の10月に通信制高校に転入学する。
- 定時制高校に2年生まで在籍し、その後退学した。しばらくの期間が経ち、新たに4月から通信制高校に編入学する。
※これらの例は一例で、中学校を卒業し高校を卒業していない人であれば、多くの場合通信制高校へ入学できます。
通信制高校に通う生徒の1日のすごし方
通信制高校に通う生徒の1日は、柔軟で多様です。自分のライフスタイルや学習スタイルに合わせて、自由にスケジュールを組むことができます。
以下は、1日のスケジュールの一例です。
通信制高校へ通う生徒の1日のスケジュール
通信制高校では、自宅での学習が主なため、自分のリズムに合わせて効率的に学ぶことが可能です。あくまでこれらは一例で、生徒は自分の予定や好みに合わせてスケジュールを調整できます。アルバイトや趣味、家族との時間なども含めて、バランスよく充実した1日をすごすことができます。
通信制高校にはクラスはある?担任はいる?
通信制高校では、多くの場合クラス制ではありません。通信制高校は単位制を採用しており、個々人の学習スタイルに合わせて学習を進めます。そのため、クラス単位で同じ授業を受けることは少ないです。同じコースで学ぶ人たちをクラスと呼ぶ場合があります。
各生徒に担任がつくため、学習スケジュールや進路に関する相談ができます。課題の進め方、将来の進路についてアドバイスを提供してくれるでしょう。個々の生徒の学びをサポートする仕組みが整っているため、自分の目標に向かって学ぶことができます。
通信制高校の制服は?
通信制高校でも、制服を導入している学校は多いです。ただし、制服の購入と着用はほとんどの場合、自由意志に委ねられています。通信制高校の特徴として、服装に関する校則が緩やかなことが挙げられます。そのため、制服が存在していても、生徒たちは自分らしい服装で登校することができます。
ただし、学校ごとに制服の着用率や方針が異なるため、具体的な情報は入学を検討している学校の公式情報を確認すると良いでしょう。
通信制高校の行事・イベントは?
入学式、卒業式、体育祭、文化祭
入学式や卒業式などの催し物はほぼ全ての学校で行われます。体育祭や文化祭などは、学校によって開催の有無が異なり、これらのイベントへの参加は通常任意とされている場合が多いです。
通信制高校は、全日制高校と比較して登校日数が少ないため、体育祭や文化祭などの準備や練習も少なく楽しむことを目的にしたイベントとして位置づけられることが多いです。
修学旅行
通信制高校の中には修学旅行を実施している学校があります。任意参加の学校が多く、生徒たちは自分のスケジュールや希望に合わせて修学旅行に参加するかどうかを選ぶことができます。
サポート校とは?
サポート校は、通信制高校とは別の場所にあり、学習の進め方や生活スケジュール、人間関係などの不安を手助けしてくれる場所です。通信制高校の生徒が抱える悩みや課題に対して、サポート校の講師やスタッフが支援してくれます。ただし、このサポートを利用するためには、学費とは別に費用がかかることが一般的です。
サポート校の利用は高校により必須か任意かが異なり、高校選択の判断材用のひとつです。3年間で卒業をめざす場合に、どの程度のサポートが必要かを考えて判断し利用することが一般的です。
なお、サポート校の利用は登校日数(スクーリングの日数)には含まれません。
通信制高校3年間で学ぶ内容は?
通信制高校の3年間で学ぶ科目は、必履修科目と選択科目に分かれています。必履修科目は、必ず学習しなければならない科目です。一方、選択科目は生徒自身が選択し、受講するかどうかを決めることができる科目です。必履修科目と選択科目の単位を合わせて、卒業に必要な単位数を満たす必要があります。
以下に、必履修科目の一覧を示します。
高等学校の各学科に共通する必履修科目
国語 |
|
---|---|
地理歴史 |
|
公民 |
|
数学 |
|
理科 |
(「科学と人間生活」を含む2科目、または基礎科目を3科目) |
保健体育 |
|
芸術 |
(いずれか1科目) |
外国語 |
|
家庭 |
(いずれか1科目) |
情報 |
|
総合的な探究の時間 | ― |
※選択科目は必履修科目の応用や、学校独自の科目で設置している場合があります。
自宅学習の注意点
自宅学習は、登校に要していた移動時間を自由に使うことができ、生活の中に学習時間を組み込みやすく、余裕のあるスケジュールを作ることができます。ただし、遊んでしまったり気を抜いたりすることも考えられます。そのため、自分をコントロールすることが求められます。
自己管理能力を高めつつ、定期的な休息やリフレッシュも大切にしましょう。
全日制・定時制との違い
高校には全日制、定時制、通信制の3種類があります。
それぞれの違いを分かりやすい表にしたものが下記です。
通信制高校 | 全日制高校 | 定時制高校 | |
---|---|---|---|
学歴 | 高校卒業 |
高校卒業 |
高校卒業 |
学習制度 | 単位制 |
学年制 |
学年制/単位制 |
就学支援金 | ◯ |
◯ |
◯ |
卒業年数 | 3年 |
3年 |
3~4年 |
学習方法 | 課題提出(ネットor紙) |
対面授業 |
対面授業 |
登校 |
年間20日程度 |
週5日 |
週5日(夕方/夜) |
区域 | 狭域制または広域制 |
学校により指定あり |
学校により指定あり |
通信制高校のメリット
まず、自分のペースで学べる柔軟性が挙げられます。自身のライフスタイルや体調に合わせて学習スケジュールを調整することができます。登校日数が少ないため移動時間が減り自由な時間の確保がしやすい点、朝の満員電車や雨の日の移動による苦労も減らせる点も挙げられます。時間にゆとりができることで、アルバイトや他の興味を追求しながら学習できるのも魅力です。
オンライン学習や教材を通じて、デジタルスキルも向上します。通信制高校は自己管理や時間管理の練習にもなり、将来役立つスキルの獲得に繋がる可能性があります。
通信制高校のデメリット
一方で、通信制高校には考慮すべきデメリットも存在します。自分の学習ペースをコントロールするスキルが求められ、その難しさによって計画通り学習が進まないことやモチベーションが低下するリスクがあります。また、生徒間のコミュニケーション量が少なくなる点は人によりデメリットです。
通信制高校の学費
学校により学費は異なり、幅があります。ここでは公立と私立の学費の例をご紹介します。
公立(東京都立の場合) | 私立 | |
---|---|---|
入学金 | 500円 |
10,000~50,000円 |
授業料(年間) | 10,400円 |
180,000~300,000円 |
教科書代、他 |
30,000円 |
20,000~100,000円 |
公立の学費は安く、eラーニングをほぼ導入していないため、提出は郵送の場合が多いです。一方、私立はeラーニングを導入している学校もあり、オンラインでレポートを提出できる場合があります。
私立の通信制高校の学費は、公立に比べて高くなるものの、より手軽に提出ができ、卒業のための学習をしやすい仕組みを持っている点に違いがあります。
高等学校等就学支援金
高等学校等就学支援金は、高校教育を受ける際の経済的な負担を軽減し、均等な学ぶ機会を守るための制度です。この制度は、世帯の年収に応じて支援金が提供されるもので、世帯年収が590万円を上回り910万円未満の場合で1単位あたり4,812円が支給されます。仮に1年間で26単位修得する場合では、125,112円が支給額です。
※年度の途中で転入する場合、履修単位数・在籍日数・入学時期等により支給額が減額となります。
※世帯年収が590万円以下の場合、支援金が加算される場合があります。
生徒に支給される支援金は、高校が代理受領し、授業料と相殺されます。高校に対して四半期ごとに支給され、生徒や保護者が国や都道府県から直接受け取ることはありません。
なお、サポート校の利用費用は支援対象外です。