通信制高校通信制高校のルネサンス高校グループ

#2 貧困をなくそう

最終更新日:2021.10.25

オルタナティブ教育
長谷川 高士

オルタナティブ教育
長谷川 高士

こんにちは、長谷川です。
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉やロゴを、街を歩いていて目にするようになりました。そうはいっても、SDGsのことを詳しく知っている人はまだあまりいないようです。SDGsは、世界全体で起こっている問題を改善していくための目標です。それなら、この世界規模の問題を、どうこれからの未来を生きる生徒たちに伝えていったらいいのでしょうか。今回は、SDGsの「貧困をなくそう」というテーマをどう伝えていくか、生徒たちとの講義からお知らせしていきます。

SDGs教育と通学スタンダードコース

SDGsについて教えることは、持続的な開発のための教育、ESD(Education for Sustainable Development)と言われ、「持続可能な社会の作り手をはぐくむ教育」とされています。しかし、現状の教材の多くは小学校向けのもので、大人や大学生・高校生が学ぶ内容としては物足りないと感じるものばかりが見つかります。 ルネサンス高校には、オプションとして「通学スタンダードコース」があり、こちらは通常の高校教育課程とは別のカリキュラムを実施できるため、この通学スタンダードコースで、SDGsを含む新しい教育を提供してみようと、教材を探しながら講義をしていくことにしました。

ドキュメンタリー映画を題材とした講義

2019年度から、ドキュメンタリー映画をもとにSDGsについて学ぶ機会を設けてきました。ただ映画を見るだけでは、生徒の頭にはあまり印象に残りません。映画の内容に合わせて、映画を見る前と見た後に専用のプリントを用意しておき、どうしてこの映画をみるのかや、見終わった後の学習をしてもらうことにしました。

コースの中で使っている動画と、プリントを紹介していきます

SDGsターゲット1 貧困をなくそう

1ドルで生き抜く/ 原題 Linving on one doller(Amazonプライムビデオ)
1ドルで生き抜く/和訳 1ドルで生き抜く(Amazonプライムビデオ)

教材プリント/livingononedoller.pdf

この映画が製作された時代は、まだSDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)として貧困をなくそうとしていたのですが、特に貧困を扱うドキュメンタリーとして優れています。

さらに、SDGsターゲットの1つ目の「貧困」以外にも多くのSDGsターゲットに広げるための基礎になっています。
具体的には、「貧困」以外に「質の高い教育をみんなに」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」 とかなり多くの問題提起が含まれています。そのため、SDGsの目標をあらかじめ簡単に知っておけば、貧困以外の多くの問題があるのだと理解できます。

SDGsとして「貧困」を扱うのが難しいのは、実感ができないからです。 豊かな先進国に住んでいると発展途上国ではなぜ貧困が起きているのか、貧困とはどういうものなのかが想像できないのです。そうはいっても、自分が貧困になってみることは難しいし、仮にそうやったとしても、健康面でも、安全面でも非常に危険な行為です。

この映画は、大学の先生が言う「貧困」を体験してみることにした、4人の大学生たちの記録です。南米グアテマラのペニャブランカ村での生活は、生きていかなければならないけれどもお金がないという貧困の実態がよく分かる内容になっています。 こうした実体験が記録されていることで、世界全体で取り組まなければいけない貧困とはいったい何なのか、どうすれば解決できるのかを考えることができます。

50分の講義では映画そのものが見終わらないことと、ある程度貧困とはどういうことなのかを知っておかないと映画の内容についていけないこともあり、いくつか事前学習をしてから映画をみてもらうことにしています。

また映画に出てくる「ローサ」の人生についての15分のインタビュー「ローサ、嵐を越えて」(原題:Rosa these storms)もすばらしい。ローサはかなり単純な英語字幕で物語が展開することもあり、中学生ぐらいの実力があれば自分で字幕を翻訳できます。こうした字幕の翻訳も通学スタンダードコースでは教材にしています。

映画を見終わった後は、どうしたら貧困を解決できるのか、なぜ貧困が起きているのか、といったことを問いかけつつ、感想を考えてもらいます。そんな中で出てきた生徒の感想を2つ紹介します。

生徒の感想

  • 「貧困を解決する方法は小口金融や共同体などでお金を得て、何か事業を始めることだ。
    なぜならそれで今よりも収入を得れる可能性があるからである。収入があれば子供を学校に行かせることができ、学があれば仕事を得ることができる。もし定職を見つけることができれば安定した収入を得ることができ、自分のみならず共同体の仲間の貧困の解決にもつながるだろう」
  • 「個々の家庭が小口金融を利用することによって、まず個人の営む仕事の土壌が整い、それによって投資なしで仕事を続けた場合よりも多くの利益が短期間で生まれ、そのでかい利益が学校に通えないけど学習意欲のある子供たちが家庭の金銭面を憂うことなく卒業まで辞める必要もなく学びたいと望むものが学べ、その学びが生かせる職業に就き、その確かな技術・経験にもとづいた職がまた利益をもたらしたら利益のサイクルができるのではと思った」

SDGsの掲げる「解決しなければならない問題」というのは、今を生きる高校生たちにとっては、自分たちが10年後に解決できているか、その解決に対して何らかの努力が求められる話でもあります。ドキュメンタリーを通じて、とてもよい学びになっていたと思います。