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教育コラム #7 二律背反するものを「サステイナブル」に変えていく試み

掲載日:2022.01.25

オルタナティブ教育
長谷川 高士

オルタナティブ教育
長谷川 高士

SDGs教育に対する考え

こんにちは、長谷川です。
通学コースでのSDGs(持続可能な開発目標)に関わる授業は、もともと英語・社会・生物・化学など複数の分野に関わる内容を教えたいという目的から作っていきました。 「今世界でこんな問題が起こっているということ」を先に知れば、国語・数学・外国語・理系科目・社会系の科目で学んだ内容が、何に役に立つのかを考えてもらえると思ったのです。

ところが、次々に消費されていく資源をこの先も利用できるように、つまり持続可能にしていくのは多くの場合、理不尽と思えるほどの「不便」との戦いです。 一見、こうした不便さとこの世界の問題とは、同時に成立しない、二律背反するもののように感じます。これはむしろ不便との戦いではなく、持続可能にしていく試行錯誤なのだと考えるようになりました。

例えば、授業でとりあげたドキュメンタリー映画「プラスチックの海」は、世界各地のプラスチック事情と、海の生き物と生態系に及ぼす影響を扱った作品です。映画では、街中に投げ捨てられたプラスチックが海に流れ着き、海鳥や魚に蓄積している様子がわかります。

SDGsターゲット14 海の豊かさを守ろう

プラスチックの海

授業では、「プラスチックの海」を見るだけではなく、生徒たちに街に出てもらい、街の中の様々な「ゴミ」を写真に撮ってきてもらいました。その結果、ある程度清掃されているとはいえ、街にある様々なゴミの状況が分かってきました。 一見、こうしたゴミが海にたどり着くとは思えませんが、回収されなかったゴミの行きつく先は結局海なのです。

では、プラスチックごみを減らすためにストローやポリ袋を減らす、または使わないことが問題の解決になっているのでしょうか? あるいは、プラスチックを使わない生活をすることが、問題の解決になるのでしょうか?

別の言い方をすれば、プラスチックを使わないという「不便」を受け入れることが、海の生態系を守り、ひいては地球を救うことになるのでしょうか?

その結論を出す前に、一度SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)で何が起きていたのかを振り返っておく必要があります。MDGsは、2000年に設定された世界中の問題を解決するための目標でした。この取り組みは15年間続けられ、SDGsよりもかかげる目標範囲は狭かったこともあって一定の成果があがりました。 こうした目標達成のために、募金活動など慈善事業などもおこったものの、こうした一時的な経済的支援では問題を解決しにくかったことが、SDGsの「持続可能」というキーワードにつながっているように感じています。持続可能ということは、経済的に自立していることとほぼ同義です。諸外国からの支援に過度に依存せず、自分たちのことは自分たちでできるようになるというのが本当の「持続可能」でしょう。

プラスチック問題も、例えば「プラスチックを使わない」という行動をするだけではなく、プラスチックを購入した費用から一定の費用を海や川の清掃に使ったり、またはプラスチックが生分解される技術に投資をしたりしていくほうがより持続可能といえると思います。 プラスチックの代替品を作るビジネスや、海に流れ出てしまうゴミを回収するビジネスで利益が出て生活していけるほうが、不便さを受け入れるよりもずっと現実的だと感じます。 生徒たちには、少なくとも「プラスチックが海の生き物に問題を起こしている」ことと「プラスチックを使う生活をしている」という矛盾に向き合ってもらうことになります。便利で清潔だし、身の周りのものはみなプラスチックで、使わないことのほうが難しいという生徒の意見もありました。

今後、プラスチックを使わないという不便さを受け入れるよりも、自分たちの毎日の消費する中から海の生態系を守るようにした方がより持続可能といえるのではないでしょうか。